12月23日(火)
[既報関連]サンパウロ総合大学構内にあるIPT(サンパウル州技術調査院)講堂で、十八日、自閉症児教育に豊富な経験をもつ三枝たか子さんが講演を行い、満席となった受講者に大きな感動をもたらした。講演会は、国際協力機構(JICA)サンパウロ支所(小松雹玄支所長)とIPTの共催、Associacao de Amigos do Autista(AMA)とオイスカ・ブラジル総局の協賛で実施された。
十六日夜、ウルグァイから着聖した三枝さんは、翌日、AMAが行っている自閉症児教育の現場(複数)を視察して見聞を広めた。これを踏まえ、武蔵野東学園を創立した北原キヨさん(故人)が開発し、ウルグァイにあるモンテビデオ・ヒガシ学校でも成果を発揮した「生活療法」と、AMAの〃マンツーマン〃方式を部分的に比較した。教育者として千八百人を越える多くの自閉症児を見てきた、豊富な経験に裏づけされた話が受講者の関心を引きつけた。熱心にメモを取る姿が目立った。
「ウルグァイ自閉症児教育の燭光」と題する本紙十二月十七日~十八日連載記事のように、生活療法の基本は集団教育であり、体力・心・知力も健常児と同じレベルに最大限近づけることにあるという。話と並行して、生活療法の実例を示すビデオが会場正面に映し出され、感動が盛り上がった。
中米ホンジュラスの自閉症児援護協会会長やパラグァイ・イグアスー移住地の元日系社会ボランティアも真剣に受講した。会場には二十人ほどの日系人がいた。その中の一人は、自分の子供をモンテビデオ・ヒガシ学校に入学させる希望を表明した。別の夫婦は、武蔵野東学園を視察したい、と申し出た。日系コロニアにも自閉症児が存在することが明らかとなった。
「現在は、誕生する子供千人のうち、五人から十五人が自閉症児だと言われています。増えている理由や原因は分からないのですが…」と三枝さんは指摘している。
二〇〇四年七月にAMAがサンパウロで自閉症の国際シンポジウムの開催を計画していることも判明した。講演を聞いていたAMAのMarli Bonamini Marques会長が、三枝たか子さんに出席を強く求める場面もあった。
日常生活の中でほとんど耳にすることのない自閉症であるが、今回の講演はブラジルにおける自閉症児の存在と、その教育がかかえる現状がクローズアップされる初めての機会となった。三枝さんは講演を終えた足で離聖し、日本に帰国した。