12月25日(木)
【ヴェージャ誌】トム・ピーター氏はマイケル・ポーター氏とピーター・ドラッカー氏と並んで米国の三大未来学者といわれる。著書「リ・イメージ」のポ語出版に寄せてブラジルの読者のために、同氏は記者会見に応じてくれた。
【現代は、どんなカオス(混沌)の時代か】何が起きるか予測不可能なカオスで、国家の安全や企業の存続、個人のプロ生命も含めて、一切が不安定な時代。これまで絶対的と信じられた理論が煙りのように崩れ、それに代わる理論が生まれて来ない。企業経営に、普遍的真理など存在しない。
【カオスは、永続するか】冷戦が終焉してカオスが起きた。ごく少数の人は、うまく波に乗り巨万の富を得た。今は、グローバル化のカオス時代だ。テロは昔、例外的戦法だった。現在は常套手段で数千万の人が参加する。技術の世界でも、時代を革新する発見や発明が続出している。ITの覇者は太平洋を越えて、中国やインドの方向へ移っている。この二カ国が自信をつけたら、世界の力関係は大きく変わる。しかし、それは一朝にして成らない。
【時代が変わると、楽しいわが家も変わるか】もちろん変わる。米国では、八〇%の家庭が夫婦共稼ぎだ。夕食の団らんは、もうない。テロとは、誰が敵なのか分からない。これを〃文明の衝突〃という人もいる。文化や宗教、産業、社会構成、政治形態の相違が、社会不安の原因を作る。個人や企業、国家の正しい基準を定義できなくなった。
【カオスに備え個人的に、どうしたらよいか】個人的には、独立心を養うこと。
各人が、私会社の社長になる。会社は、いつ倒産の憂き目に遭うか分からないリスクがある。自分の人生が、いつ断崖絶壁から落ちるか分からない状況にある。
どの仕事に従事していても、変化に対応できるように準備しておく。ドン底に落ちても、誰も手を貸してくれない。人間関係は、信頼されるような関係をつくる。誰が助け、誰が見捨てるか分からないのだ。
【求められる社長像は】企業の使命は、変わった。社長は、まず独創性をアッピールする。変わり身の早さを示威する。それが出来ないと、プロ生命も企業生命も長くないと見られる。企業を取り囲む環境は、目まぐるしく変化している。変化に対応できない社長は、負け犬のムードだ。
【「不確定時代」を発表した一九八七年と現在の不確定は、異なるか】不確定は同じ、異なるのはスピード。一九八七年にインターネットは、なかった。ソ連は健在だった。スピードは、さらに加速される。ただ変化が先行するのか、後になるのかは分からない。
【科学の進歩と変化は、昔からあったのではないか】現在のカオス的変化は、それと同一ではない。科学的根拠の有無が異なる。資本主義社会では、ある時点に達すると既存の組織を破壊して新たな高度文明を構築しようとする。この変化を容認するかを考えるのが、前者の変化。新たな高度文明を実現するため、旧文明の破壊を促す。これがカオス的変化だ。
【IT革命は、格差の是正や国際摩擦の解決に貢献しないか】国際摩擦は、予測できない。管理下に置くことも不可能。現在の摩擦はアジアに始まり、高度化された先進国世界を相手にしている。平和的に解決するには、溝があまりにも深すぎる。人類は最終的に自滅するという説が間違いならば、ある日奇跡的に解決し銀河系宇宙は安泰だ。