新年号
04年1月1日(木)
「いまだ公に語られていない移民の物語を拾い集めて、今のうちに保存しなくては」と語るのは、ブラジル日本移民史料館の大井セーリア館長だ。同館から百周年祭典協会に提出された「ブラジル国内百年探検隊」案は、国内津々浦々に取材班を派遣し、映像、写真、文章などで記録する壮大な計画だ。それを整理して、全伯の主要日系団体会館で巡回展を行うというもの。総予算は三百万レアル。実現すれば、将来への大きな遺産になることは間違いなさそうだ。
「このプロジェクトは〃日系コミュニティーの肖像画〃とでも言ったほうがいいかしら。邦字紙とかにしょっちゅう登場される方でなく、一般の移民の話を残すことが大事ではないでしょうか」。
元ジャーナリストの大井館長らしい発想だ。「現在、史料館の収蔵物はサンパウロを中心としたものだけど、日本移民の歴史は全伯に刻まれている。この調査・取材を行うことによって、はじめて本来の全伯を代表する史料館になれると思う」。
例えば、笠戸丸移民は五~六カ所のファゼンダに配耕された。「イトゥー市にはそのうちの一つが、今でもファゼンダ・ホテルとなって残っています。笠戸丸から現在まで。その歴史を記録するのです」と〃百年探検隊〃の意味を強調する。
数人の取材班を組み、車に機材を積み込んでビデオ、写真も含めた取材旅行をしてまわる。北パラナなら北パラナを十数カ所一気に取材し、できるだけ経費を節約する意向だ。それでも調査・取材だけで二年間はかかると見ている。
その素材をもとに、写真集、本、ドキュメンタリービデオなどの制作を進めると共に、巡回展用にパネル展示も作る。パネルは何組も同じものを作り、二〇〇八年中に全伯の主要日系団体会館を巡回できるようにしたい、と語る。
と同時に、インターネット上にホームページも開き、展示の一部を日ポ両語で広く一般に公開し、ブラジル社会と日本社会双方に対して移民史の普及を図る。
調査・取材に二年間、収集した素材の整理・執筆に一年間予定する。逆算すれば、あまり時間はない。「可能であれば〇四年、遅くても〇五年には始めたい」。
〇二年頃から温められていたこのアイデアの予算総額は約三百万レアル。スタッフや運転手の人件費、車輌代、交通費、フィルム代、機材購入費、宿泊費など、莫大な費用がかかる。ただでさえ大赤字の同史料館単独では不可能な計画であるため、百周年記念事業に提案した。
できれば、〇四年のサンパウロ四百五十周年記念として、まずサンパウロ市内の日系団体を調査・取材し、巡回展をできれば、と考えている。そうすれば、全伯で実施する場合の予備調査にもなる。
「協力してくれる企業や篤志家のみなさんの申し出をお待ちしてます」と大井さんは呼びかける。同史料間への連絡は電話011・3209・5465まで。