新年を迎え、読者のみなさんも、日常生活にメリハリ(緩めることと張ること)をつけようと、気持ちを新たにしているのではないだろうか。よく長寿とは、単に長生きすることでなく、元気で長生きすることだといわれる。元気でなければ、生活にリズムやメリハリはつけられない▼さきごろ、本紙中面に「ハエ(蝿)も老いで物忘れ」という記事があった。東京都神経科総合研究所の研究だという。この研究成果を、老いによる人の記憶力の衰えや痴呆症の解明に役立てるそうだ。ハエが老いをさらけ出したのを、すかさずアプロベイタするわけ▼記憶力減退や痴呆は若い者にもやって来るとはいうが、若い者は持ち前のバイタリティゆえに我が事とは考えない。実際、ケースは少ない。高齢者にとって、日々切実になっていくのはいたしかたない▼通勤の途中、地下鉄リベルダーデ駅階段や、東洋街のルアで、老いた犬が野性を失い、寒さ、暑さに関係なく、正体もなく寝そべっている姿を見る。車に轢かれたり、通行人に踏まれても当然のような状態である。人の老いと重ねたくないが、意識の奥でそうしている▼さて、サンパウロ青年図書館の主宰者は、どこにも行かず、じっと毎日を過ごしている高齢者に来館をすすめている。マンガ本の多い図書館だ。孫、曾孫のために借り出すこともできる。生活にメリハリをつけることは、心掛けで決まる。老いたハエを痴呆の解明に役立てようとするエスペルトさを日常持ち合わせたい。(神)
04/01/15