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鳥インフルエンザ ブラジル輸出に追い風=笑い止まらぬ養鶏業=日本、欧州から引き合い殺到=貿易黒字予測 早くも上方修正

1月29日(木)

 【一面関連=エスタード・デ・サンパウロ紙、フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十八日、時事二十七日】ブラジルには、「人の悲劇が笑顔を生む」ということわざがある。例えば、倒産した商人にとっては辛く悲しい出来事であっても、同業者にとっては利益を多く得られるチャンスでもあり、思わず笑みがこぼれてしまうという例えだ。二十七日、サンパウロ州ソロカーバ市の養鶏業者がそう言った。―現在、アジアで鳥インフルエンザが流行し、鶏肉輸出大国のタイや中国でも被害が確認されている。そのため、感染なしの安心できる鶏肉を提供するブラジルに日本などから鶏肉輸出の依頼が殺到している。これを受けたブラジル貿易会(AEB)は、今年の予測貿易収支を「八百億ドル以上になる可能性大」と修正している。

 今年初め、AEBは今年の貿易収支を七百八十八億九千万ドルになると計算していた。これには、大豆の価格の値上がりによって得られる三十億ドルも含まれているが、アジアの鳥インフルエンザや米国の狂牛病による輸出増、鉄鉱価格の値上げ(一八・六二%増)などの影響は計算外だった。
 何の努力もせずに鶏肉や牛肉の引き合いが他国から入ってくる。AEBによると、このビジネスチャンスをうまく利用した場合、今年の貿易収支は八百二十億ドルに達する可能性があるという。
 AEBはしばらく様子を見て予測値を修正する予定で、今月初めの状況とはまったく違うことは認めている。ジョゼ・A・カストロAEB総務理事は、「予測値はこれから少々変更されるだろうが、輸出は恐らく増加するだろう」と推測している。
 貿易収支予想額に加えられたのは、(1)鶏肉輸出の五億ドル、(2)牛肉輸出の七億ドル、(3)鉄鉱価格の値上げによる十億ドル、など。
 さらにコーヒー(カフェー)相場が快調な成績を見せており、カストロ理事によると「後は生産量を上げて需要に応じる態勢をつくるのみ」だという。また、ブラジル空軍公社『エンブラエル(Embraer)』は昨年、航空機百機を輸出した。今年は百六十機まで増加するとみられており、貿易収支に十二億ドルを加算すると予想される。
 カストロ理事によれば、ブラジルの鶏肉市場で問題になっていたのはロシアの鶏肉輸入規制だった。だが
 Brascan銀行の食品部門アナリスト、クラリッサ・サウダーニャ氏も「鳥インフルエンザがブラジルに利益をもたらす」とカストロ理事の意見に賛成だ。タイ産鶏肉を輸入禁止した日本や欧州連合(EU)からブラジル産鶏肉への関心が高まり、タイや中国の市場に滑り込む形になるという。昨年十二月には、米国で狂牛病が発見され、ブラジル産牛肉の市場展望も明るくなった。
 この状況の好転でサンパウロ市株式市場では、サジーア、ペルジゴン、セアーラなどの鶏肉大手の株価が約三〇%も上昇している。
 フルラン開発相は二十七日、訪問先のインドで、「アジアの鶏肉生産諸国での危機は一時的なもので、永久に続くわけではない」と指摘。その一方で、「ブラジル産鶏肉は安全性と品質を兼ね備えており、短期的には市場での需要が高まろう」との見通しを示した。
 訪日中のブラジル農業使節団(団長・マサオ・タダノ農務省農牧業担当局長)は二十八日、都内の同国大使館で記者会見し、「日本は加工品しか輸入していないが、ブラジル産の牛はすべて牧草で育っており、安全だ。品質、価格面でも十分に競争力がある」と言明。鶏肉についても「日本の必要とする鶏肉の量を十分に提供する用意がある」と強調した。
 農務省は鳥インフルエンザの予防対策として、日本やベトナム、韓国などの鶏や鶏肉、鶏製品などの輸入を一時的に禁止するほか、鳥インフルエンザの流行地域から来た人々の養鶏場などへの訪問も禁じている。また、世界動物保健機関のリストにある国も、輸入禁止の対象国となる。現在ブラジルで唯一輸入している外国産の鶏肉はアルゼンチン産のみ。しかも少量だという。
 一方、日本の流通・外食業界からは、ブラジル産の代替品の品質と価格に対し、「鶏肉の空揚げの味が違う」「コスト高だ」といった不満の声も上がっている。日本側はタイや中国からの早期の輸入再開を待望している状態だ。