1月31日(土)
ブラジル将棋界の四大タイトルの一つ、老中棋聖が存続の危機に立たされている。駒落ちでの対局な上、勝っても昇段が認められず、出場者数が近年ぐんと落ち込んできているため。三十三回目の今年はとりあえず様子をみることになったが、来年以降の開催が危ぶまれている。
老中戦は故中林武衛さんを顕賞するため、武田春海さん(故人)ら中心になって七二年に創設されたもの。同氏は駒落ち将棋を得意とし、よき指導者として知られた。
木村義雄初代名人(故人)とも親交が深く、日本から「詰め将棋」を導入するなどして、将棋文化の普及を図った。息子の故敏彦氏が日伯毎日新聞社の創業者だったこともあり、老中生のペンレームでたびたびコラムを書いた。
ピークの頃には、百三十人 百四十人の大会出場者がいた。愛好者の高齢化とともに年々減少。昨年は五十四人にまで落ち込んだ。特に、「地方から参加者が減っている」と関係者はもらす。
レベルの低い対局相手にはハンディーがつき、大会に優勝しても昇段は認められない。そのため、魅力に欠けるとの見方が有力だ。
「三段が五段を破ったときには、昇段させる」といった内規はあるが、これまでに適用されたことはないという。
ブラジル将棋連盟(中田定和会長)は三十回目を迎えた二〇〇一年に、大会の存続について、初めて討議した。賛否両論に分かれ、議論は現在までもつれこんでいる。一昨年に七十六人、昨年が五十六人と事態は悪化。タイトルの「継続」よりは、「廃止」が支配的な意見になった。
老中棋聖と平行して、老中賞を設け、一年間に目立った活躍をした棋士を表彰していた。一時期、賞を乱発したため候補者不足になり、中断されていた。こちらは今年、再開させる話が出ている。
第三十三回老中戦は来月二十九日に、サンパウロ市リベルダーデ区ガルボン・ブエノ街三三番の将棋会館で開かれる予定だ。