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ブラジル人の道徳心、希薄に=農場で奴隷労働強制=脱税し海外に巨額送金=公務員を縁故採用

2月3日(火)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙、フォーリャ・デ・サンパウロ紙三十一~二日】ブラジルで非人道的、反社会的な事件が相次いで発覚している。二十八日に発生した労働省の取締官三人の殺害事件では、容疑者も手がかりもない状態である。国税庁では、偶然にも明らかになった脱税者と思われる人々の外国への巨額送金が問題化している。サンパウロ市では、保健局内での縁故採用の疑いが浮上し、ユネスコまで巻き込む騒ぎになっている。すべて、ブラジルのモラルが疑われる事件ばかりである。

 [労働取締官殺害事件、既報]二十八日午前、ミナス・ジェライス州ウナイー市近郊で労働省の監査取締官三人が殺害された事件で、連邦警察はこのほど、農場での奴隷労働が確認されたパラー州での取締官殺害事件も今回の事件と関連があるとみて、捜査範囲を広めることを発表した。
 ウナイー市のジョゼ・B・シウヴァ市長(PTB=ブラジル労働党)は、パラー州に農場を持っており、奴隷労働で告発されている。今回の事件で同市長に疑いはかけられていない。
 市警、軍警、連警、ミナス州道路警察、検察庁の代表らによる合同捜査班が結成された。現在、事件の謎とされている主な点は、(1)取締官が〃処刑〃されたのか、それとも強盗に遭ったのか、(2)運転者は発砲者が二人だと言ったが、警察は三人ではないかとみており、また凶器も定かではない、(3)容疑者も手がかりもない、などである。
 [〃脱税者〃の外国送金]一九九八年から二〇〇二年の間に、所得税を申告していない自然人(一般人)六百九十八人および法人(企業)によって、総額約四十三億レアルが外国へ送金されていたことがこのほど、国税庁の調査によって判明した。
 これらの〃脱税者〃たちは、中銀に登録が残る公的な送金方法であるCC5を用いて、他国(タックス・ヘイブンを含む)の数百に及ぶ銀行口座に送金していた。CC5とは、ブラジル人が外国に送金する際に使う送金方法で、企業などもよく利用する。外国政府や国際機関が送るドルなどもCC5を通してブラジルに入る。
 バネスタード銀行の査察委員会(CPI)が、中銀に九六年から〇二年までの四十一万二千七百五件(五千一億レアル相当)の送金明細書を求めていた。CPIから回ってきた中銀のフロッピーディスクを見た国税庁は、やっとこの不正な送金事実に気がついたという。
 同CPIのアンテーロ・パエス委員長(PSDB=ブラジル社会民主党)は、「ブラジルが大きな〃クリーニング屋〃になったかのようだ。中銀は国税庁に何も報告せず、公共機関はコミュニケーションをとらず、州と州の間ではそれぞれ秘密事項もあるようだ」と驚いている。「中銀は国税庁に送金関係の情報を常に開示しなくてはならない。法律を変えるべきではないか」と訴えている。
 [サンパウロ市保健局の縁故採用]サンパウロ市保健局はユネスコに関係する職務に、当局のファビオ・メスキッタ開発部指導員の元妻、娘、娘のボーイフレンドを不当に雇っていたことが三十日、明らかになった。保健当局は同日、縁故採用の可能性があるかどうかを捜査すると発表した。同指導員自身も事実を認めている。
 メスキッタ氏は、同市伝染性性病(DST)・エイズ局の元指導員であり、法務省の麻薬対策局長官に指名されると噂されている人物。本人は「不正な雇用ではない」としながらも、娘のジュリアーナさんの雇用に関しては「自分が無頓着すぎたかも。娘は時間も守る几帳面な職員ではあるが、やはりこの状況を変えるべきだろう」と反省している。
 一月下旬、サンパウロ市のエイズ関係のNGO団体の間で、「ユネスコを通してサンパウロ市が不当に職員を雇用した」という情報が飛び交った。職員は前記の三人である。ジュリアーナさんのボーイフレンドは、アンドレー・フラテスキさん。セウソ・フラテスキ同市文化局長の息子でもある。三人はユネスコと提携する職務に就いていたとされる。
 一方、ユネスコは「縁故採用は一切認めない」という姿勢で、今回の不祥事に関してサンパウロ市側に説明を求めた。ユネスコとの提携責任者であるゴンザーロ・ヴェシーナ・N氏は、ブラジリアでユネスコのJorge Werthein氏と会談し、弁明したもよう。