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最新農業の現場へ=日系農協活性化セミナー(3)=米国に学ぶところはない=棉の峰さん「私達が先進」

2月6日(金)

 個人が所有する土地で、地平線が見えたのは生まれて初めてだった。「ブラジルの棉やってる人の間では、峰(忠志)さんの名前をみんな知ってる」と南マット・グロッソ農業協同組合の神谷栄理事長。峰さんは、サンパウロ州に二千百ヘクタール、ミナス・ジェライス州に九百ヘクタール、マット・グロッソ州に千七百ヘクタールの棉花農場を持つファゼンデイロだ。一行は、峰さんの農場と棉花工場を視察した。
 峰忠志さん(五八、佐賀県出身)は一九五七年に両親とともに移住。故前田常左衛門さんが開いた、前田農場からの呼び寄せ移住だった。「独立した二十二年前からずっと棉花をやっている」と峰さん。現在では、六百ヘクタールの大豆に加えて、小数ながら肉牛や馬も育てる。
 今年は所有の棉花工場で、七千トンの処理、うち四千七百八十八トンは自家生産の棉花を予定している。同工場では、畑から運ばれてきた十トン単位の棉花からごみや種を取り除き、再びまとめる工程をこなす。種は、別会社にトンあたり八十ドルほどで販売する。油は棉実油と呼ばれ、食用油、石鹸、マーガリンなどに利用される。
 自社製品の商談部屋に峰さんの素顔が垣間見られた。部屋へ入る途中が二重扉になっており、外部からの光が不用意に入らないように気を使う。「棉花がきれいに見えるように、照明を一般の部屋より明るくしている。また、壁の色や台と天井の距離も良く見えるように計算している」と明かす。常に計算機を携え、数字や計算に重きを置く峰さんならではのこだわりだ。
 サンパウロ州では十月十日ごろから十一月三十日までには種を蒔く。(ミナス州は十一月十五日から十二月三日、マット・グロッソ州は十二月七日から十七日)。芽が出てからおよそ百六十日(ミ州百六十日、マ州百八十日)で収穫する。収穫時には、薬で葉を落とした後で、三十三万ドルで購入した大型機械六台を中心に一気に収穫。一台で四十トンから五十トンは処理可能。うち、三五%が海外に輸出される。
 「アメリカに行っても見るところはない。ブラジルの方が棉花に関しては研究している」と言いきる。「金持ちの国は援助があるが、貧乏国は援助が無い。だからがんばるのだ」。アメリカからの研修生達にはいつも言う。
 日系農業協同組合中央会の田岡功理事長は「棉花を大規模にやっている人は、種の精油所や種の粕を利用したり、肉牛を大規模にやっていたりする。峰さんは棉花だけ。なかなか真似できない」と驚いていた様子だった。
 一行は、最後の目的地大豆農場へ向かった。
    (佐伯祐二記者)

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