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女性が支えるカーニバル=リーダー格で活躍=「華やかさ」演出に不可欠

2月7日(土)

 【ジアーリオ紙系ジャー誌1月11日】もし、美しいカーニバル・パレードを披露するエスコーラ・デ・サンバ(サンバ学校)に女性がいなかったらどうなるだろうか? 華やかでセクシーなブラジルのカーニバルは世界的に有名になっていただろうか? エスコーラ・デ・サンバではまだまだ男尊女卑的な考え方が強いが、カーニバルの栄華は女性のおかげだと言っても過言ではない。バッテリーア(打楽器楽団)の打楽器奏者やサンバのテーマ曲の歌手など、伝統的に男性が担当する分野にも女性が進出している。ジアーリオ紙は、サンパウロのカーニバルで活躍する女性たちを紹介している。

 エリアーナ・デ・リーマさんは1980年、エスコーラ『プリンシペ・ネグロ』のプッシャドール(エスコーラのテーマ音楽の歌い手)としてパレードに登場。当時、女性のプッシャドールは初めてだった。彼女は『ウニードス・ド・ペルッシェ』や『レアンドロ・デ・イタケーラ』のサウンドカーでも活躍した。残念ながら、今年のカーニバルには出場しない。
 バッテリーアの女性奏者数も増えている。『アーギア・デ・オウロ』では40人、『ヴァイ=ヴァイ』では20人、『X―9パウリスターナ』では50人以上もいる。
 『カミーザ・ヴェルデ・イ・ブランコ』の女性奏者は20人だが、ガンザー(打楽器の一種)の演奏だけではなく、重いので演奏が難しいとされるスルド(打楽器)にも挑戦している。「女は子供が産める偉大な存在よ。スルドも演奏できるに決まってるじゃない」と、『カミーザ』のシモーネ・トビーアス副会長(三五)は男性陣を挑発する。彼女は、母親のマガリー・ドス・サントス会長とともに、14年前から『カミーザ』を指揮してきた。
 ジアーリオ紙のカーニバル審判である社会学者兼黒人文化研究者のテレーザ・サントスさんは、「前世紀初め、一家のお母さんたちがカーニバルで遊ぶことは『醜い行為』とされていた。女性が初めてデスタッケ(パレードの花形)に選ばれた時、男性の多くがその女性をからかい、拒絶反応を示した。現在では、女性のデスタッケは非常に尊重されている」と説明する。
 「自分がサンパウロ州のあるエスコーラのアルモニーア(パレードのコーディネーター)部長に選ばれた時、『あなたに発言権はない』と言われた。でも引っ込まずに言いたいことは全部言わせてもらったわ」とテレーザさん。「『カミーザ』のマガリー会長は、サンパウロ市のサンバ界での女性進出を押し進めた貢献者よ。彼女は自分の意見をしっかり主張する。みな尊敬しているわ」と敬意を示した。
 『カミーザ』のシモーネ副会長によると、同エスコーラの人員3500人のうち、60%が女性である。『ガヴィオンエス・ダ・フィエル』や『ヴァイ=ヴァイ』、『ローザ・デ・オウロ』では、パレードに参加する女性と男性の比率は半々だという。
 サンパウロ市北部のエスコーラ、『モーロ・ダ・カーザ・ヴェルデ』のラウリネッテ・カンポス会長(58、通称ドナ・グーガ)も、サンバ界の女性のシンボルだ。同エスコーラは父親が1962年に創設。18年前から会長に就任した。サンバ界では、彼女はリオの『エスタソン・プリメイラ・デ・マンゲイラ』のドナ・ジッカとよく比較されるほどのやり手である。
 「家事と両立するのは難しい。でも仕事のせいで非難されたことはない。1部リーグから落ちた時もね」と、ドナ・グーガは語る。サンバに出会ったのは2歳のころ。同エスコーラのバッテリーアの女王として活躍し、バイアーナやポルタ・バンデイラ(旗持ち)としても出場した。「わたしの時代は今のようなセクシーな服装ではなかったけれど」。
 『インペーリオ・ダ・カーザ・ヴェルデ』のバイアーナの部のマドリーニャ(代母)は、レジーナ・H・F・ロッシャさん(74、通称ドナ・ネーナ)。バイアーナの衣装にあこがれていた彼女が初めてカーニバル・パレードに参加したのは20年前。以来、毎年出場しているという。
 テレーザさんによると、「バイアーナの部」には特別な意味があるという。「リオのエスコーラ・デ・サンバは、バイア州のマンエ=デ=サント(直訳=聖人の母。黒人宗教の神の仲立ちとなる女性のこと)のテレイロ(黒人宗教の教会)から生まれた。バイアーナたちはサンバの巫女さんのようなもので、とても尊重されている」。バイアーナたちは、ネガティブなエネルギーを浄化するエスコーラ・デ・サンバの守護霊的な役目を司っているという。
 テレーザさんはまた、観客の接待を務めながらポルタ・バンデイラと一緒に踊るメストレ・サーラの重要性についても説明。「エスコーラの旗はサンボードロモに絶対に欠かせないもの。昔、旗などを他校に盗まれたら、メストレ・サーラたちが取り返していた。取り戻せなければ出場を禁じられるので、カミソリを使うほどのケンカになった」。
 現在、サンパウロ市のトップのポルタ・バンデイラは、『ヴァイ=ヴァイ』のファビーオラ・トリンダーデさん(26)。兄のレナートさん(28)がメストレ・サーラ。同エスコーラの一番目(最重要)の旗持ちカップルとして、6年前から10点満点を獲得し続けている。「いつも緊張してパレードに出ている。25キロの仮装衣装に包まれ、しかも常に笑顔でいなければならない。でも、やっぱり大好きです」。