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子供は言葉の探検家=中島教授講演=バイリンガル「環境与えよう」

2月10日(火)

 ブラジル日本語センター(谷広海理事長)主催の講演会「バイリンガルを育てるには?」が八日午後二時からサンパウロ市ヴィラ・マリアーナ区の同センター講堂で開かれた。講師は中島和子名古屋外国語大学教授(同大学留学生センター所長)。カナダでの研究や本人の体験を踏まえ「子供は言葉の探検家と言われる。その力が十分発揮出来るような環境を与えなければなりません」などと語った。国際協力機構(JICA)の後援。約百二十人の聴衆が話に耳を傾けた。
 バイリンガルの子供と言えば、かつては情緒不安定∇二重人格∇学力低下になる可能性が大きいと見られていた。
 しかし、様々な研究の結果、モノリンガルに比べて読解力が増す∇話し相手に対する思いやりがある∇考え方が幅広い∇人種偏見が少ない∇第三・第四言語の習得が早い―などのプラス面があることが分かった。
 中島教授は「子供」とは言語形成期である二才から十二、三才までを指すと定義。日本語の場合は漢字学習があるため、十五歳まで含める。母語(初めて覚えた言葉で今も使える)の土台が完成するのは九歳ごろで、「バイリンガル教育を行うなら、できるだけ早い方がよい」とアドヴァイスした。
 では、二言語を伸ばすにはどうしたらよいか―。家庭環境、学習(学校)環境、社会環境を考慮。母語が伸びやすい環境では、イマージョン教育(言葉を使って教科学習をすること)が適当といえる。学校内で五千時間が必要で子供の口から文章が出るようになるまでまず、一年半かかる。この期間を沈黙期といい、教師にとってはつらい時期だ。
 子供は自分で言葉のルールを発見している。だから、「辛抱強く待つことが大切。泣くまで待とうという心がけを持つべき」。
 家庭と学校、教科別、日にち・学期などによって、きちんと言葉を使い分けることがポイント。両語を混ぜて使うと、子供は楽な言葉に流されてしまう。
 逆に母語が伸び悩む環境では、母語を保護する教育を実施しなければならない。デカセギ子女について言及。ポルトガル語を早いうちに忘れてしまう上、日本語力も十分についておらず、高校進学率が極端に低い。
 家庭環境は言語習得の基礎。母語がマイノリティーの言葉だったら、学校に通いはじめて普通二年で現地語との力関係が変わってしまう。親子の会話、本の読み聞かせを通して、豊かな言語環境を築いていく必要がある。
 中島教授は、読み書きが出来ないとバイリンガルとしては役に立たないと見解を示す。つまり、両語で仕事をこなせる(社会生活を営める)ということ。このレベルに達せば、帰属意識についても、国という枠を超えたアイデンティティを持てる。
 準二世・二世の子供を念頭に話は進んだ。ブラジル・日系社会は既に二世・三世が親の世代、多くは家庭でも学校でもポルトガル語を使うと会場から質問が出た。
 こういう状況でバイリンガルを育てるには、「日本語を外国語として教えなければダメ。そのためにはイマージョン教育を実施する学校を建設するしかない」とした。