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宗教教団がサッカーチーム経営=〝新市場〟開拓に着手=統一教会がユニークな試み

2月14日(土)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙スポーツ面一日】サッカー・サンパウロ州選手権大会が一月二十一日に開幕し、アトレチコ・ソロカーバが2×2でコリンチアンスと引き分けた。このソロカーバ市(州都サンパウロから九十キロ)のサッカークラブ(FC)は一見、ブラジル中の小規模のチームと全く変わらないが、実は全く新しいマーケティング方法である「宗教団体経営」を実施している新種のチームなのだ。経営者は韓国系の宗教団体、世界基督教統一神霊協会(通称、統一教会)の開祖で、現指導者の文鮮明(ムン・ソンミョン)総裁。ブラジルではレヴェレンド・ムーンと呼ばれている。

 エスタード紙によると、統一教会は二〇〇〇年、第三部から抜け出せなかった同チームの経営を始めた。そのチームが三年余り経った現在、第一部で名門コリンチアンスと引き分けたのだからマスコミが飛びつくのも無理はない。
 これまで、主に福音教会などの宗教団体は、テレビ局やラジオ局を購入して布教活動に努めてきた。だが統一教会は、ブラジル国民の注目の的であり、世界的にも人気のあるサッカーという新しい分野での布教に本格的に取り組み始めたと、同紙は報道。統一教会が「サッカーは健康の元」だとアピールしていくことはまず間違いないが、教会側の目的は一体何だろうか?
 文総裁のブラジルでの右腕であり、A・ソロカーバの副会長のヴァウジール・シプリアーニ氏は、「我々の目的は布教活動ではない。我々は家族をまず第一に、そして偉大なるデウス(神)がその上におられると考えている。あえて言うならアトレチコではなく、〃デウジスチコ〃でしょう」と説明している。
 統一教会側は、A・ソロカーバの選手や従業員らを無理やり信者にするつもりはないと保証しているが、FC幹部らの話し振りは他宗教の熱心な宣教師と同じである、とエスタード紙は報道する。「基本的には無口で、何かを話す時にはあらかじめ教会側が指示しておいたと思われる台詞を何度も繰り返す。取材者が少しでも気を緩めると、幹部らの関心事に話を変えようとする」と、同紙記者の感想も付け加えている。
 さらに同紙は、教会への批判を醸した言動を発すれば、たちまち修士論文のような抗弁をするとも記述。「試しに『なぜ統一教会はサッカーへの投資を始めたのか』と聞いてみなさい。それだけで統一教会の歴史を全部聞かされますよ。それでも最後にシプリアーニ氏は『世界で最も人気のあるスポーツであることは確かに重要である。でも布教は二の次ですよ』と語る」と、同紙は書いている。
 FCトレーニングセンターの受付の壁は一面、文総裁の写真が並び、統一教会の活動を紹介する雑誌や新聞などが机上を占めている。同紙は再び「文総裁だらけなのに、布教は二の次なの?」と記している。
 統一教会はソロカーバ市のサンジョゼ農場という名で知られる二百四十万平方メートルの巨大な土地を購入し、「アトレチコ・ソロカーバFCスポーツ文化複合センター」を建設する予定。
 「ブラジル最大のスポーツセンターとなる。六万人の入るスタジアムや五つ星ホテル、スポーツ医学専門クリニック、ドーム、ゴルフ場、スポーツ大学、コンベンションセンター、研究所、全スポーツ種目のトレーニングセンター、多種目スポーツのコート、レジャーエリアなどが当センターの施設である」と、同教会側は紹介している。
 シプリアーニ氏はさらに、「我々はスポーツの重要性と比例したセンターを建設するだけ。二〇〇七年か二〇〇九年には、平和杯(昨年韓国で開催)のような巨大イベントが、ソロカーバでも開催できるようにしたい」と言明。文総裁が世界で十二のFCの経営することを目標としていることも明かしている。
 一九五四年に韓国で生まれた統一教会は現在、二百カ国以上で活動しており、世界の複合企業体ベスト五十の中に入るビジネス団体である。メーカーや金属工場、医薬品産業、銀行、ホテル、メディア、畜産業、自動車産業、造船産業まで、同教会系の企業は数多くあり、FCも企画の一つとされる。
 シプリアーニ氏によると、統一教会はマット・グロッソ州のセーネFCの企画も進めていたが、教会側はサンパウロ州のFCでの企画を強く望んでいた。当初、第2部のサンベントFC(ソロカーバ市)とも交渉していたが、ライバルであるA・ソロカーバFCが、経営を百パーセント同教会側に任せることに同意したので交渉が成立したという。
 A・ソロカーバへの投資金額は明かされていないが、月々の予算はおよそ40万レアルだと推測されている。ちなみにサンベントFCのひと月の予算は八万レアルとその五分の一。昨年ブラジル選手権大会で優勝したクルゼイロFC(ミナス州)の月間予算は七十五万レアルだった。