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人種的偏見を乗り越えて=白人・黒人夫婦は24%=まだ残る周囲の”抵抗”

2月17日(火)

 【ジアーリオ・デ・サンパウロ紙】ブラジル地理統計院(IBGE)のデータによると、ブラジルではアフリカ系ブラジル人すべてを含む黒人人口が約七千五百万人に達し、この数はナイジェリアの一億二千万人に次いで世界で二番目に多い。アフリカ系ブラジル人と白人の夫婦は全体の二四%を占め、人種的偏見は乗り越えられつつある。

 七〇年代、白人の女優アルレッテ・サーレスさんと黒人のトニー・トルナードさん夫妻は公共の場でぞんざいに扱われ、時にアルレッテさんは汚れた白人とまで呼ばれた。現在は、アフリカ系ブラジル人女性と白人男性の恋愛を描いたTVドラマ『ダ・コール・ド・ペッカード(罪の色)』が放映されている。欺瞞、偽善、そして英国誌『エコノミスト』が表に出ない人種差別とみなす寛容性に満ちたブラジルで、二人のラブストーリーは挑発的なものだ。
 「ドラマが異人種同士のカップルを大きく取り上げるのは、とても素晴らしいことだと思う。こうしたカップルに対する偏見は数年前よりは減ったけど、まだ完全には払拭されていない」とTVグローボのドラマで初めて登場する主役の黒人女性を演じるタイース・アラウージョさんは語る。
 文化人類学、アフリカ系ブラジル人の研究を専門とするサンパウロ総合大学のペレイラ教授は、このドラマが異人種間の関係の受容に貢献すると考える。「ブラジルに人種的偏見があるのは事実だし、テレビが現実に影響を及ぼすことも事実だ。だからドラマのカップルは現実の恋愛関係を後押しすることにもなる」。
 結婚九年、二人の子どもがいる中国系ブラジル人のセルジオ・ウォンさんと白人と黒人の混血女性、エルザ・アウヴェス・ウォンさんは不愉快な思いを何度もした。「見も知らぬ人から女の子の母親かって、ストレートに尋ねられたことが何度かある」とエルザさんは話す。セルジオさんは家族で歩いている時、好奇の目に取り巻かれることに気づくという。
 マリア・デ・ロードレスさん(白人)とカルロスさん(黒人)夫妻は二十八年前に恋愛し、現在、二人の娘がいる。「当時は白人女性と黒人男性の夫婦が周囲に受け入れられるのは難しかった」とカルロスさんは振り返る。家族、親せきのほとんどが二人を応援したが、マリアさんのおじの何人かは当初、二人の関係に反対していた。人種的偏見がまだ強いことを二人は認めている。「ブラジルで隠された人種差別がどのくらい強いのかはわからない。カルロスと結婚してから、例えば、黒人が就職するのがどれほど難しいかわかった。彼の兄は三つの大学を卒業し、ある会社に履歴書を送った時、採用するからと会社は彼を呼んだ。でも彼を見たら採用は取り消しになった」。
 国際労働機関(ILO)によると、ブラジルでは失業が黒人の間に多く、黒人の月収は白人の半分。生活水準の世界ランキングでブラジルは六十三位に位置するが、もし黒人が別の国を作ったらその国は百二十位に下がるという。
 文化人類学者でブラジルの異人種間の関係を研究しているムナンガ・サンパウロ総合大学教授は、ブラジルは黒人と白人が共生するパラダイスだったことは過去に一度もなく、異人種間の関係はもっと成熟する必要があると話す。「白人が経済的により豊かな生活を手に入れられたから、黒人と白人が別扱いされるのだと言われるが、それはばかげている。黒人が白人と同じ生活水準を確保できないのは、機会の均等を拒まれたからだ」。同教授によると、ブラジルの公的機関による人種差別の存在の否定は八〇年代まで続き、黒人解放運動を妨げたという。