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コラム 樹海

 関西の人々は納豆を食べないそうだ。とは言っても、ねばねばした糸を引く「糸引納豆」でありあの匂いが大嫌いだと称する方々が多い。ましてやあの糸のいやらしさ―と真に手厳しい。大阪辺りでは「東京納豆」と呼ぶそうながら本家は常陸の国・水戸とされ光圀黄門さまも大好きだったし東国には納豆汁という素朴な味も残り今も冬の食卓を楽しく飾る▼ところが九州は肥後の国・熊本は昔からこの糸引きを食べるていたのかどうか。名古屋で開かれた「全国納豆鑑評会」で二連覇を果たしたという。糸の引き具合や匂いは勿論のこと肝心な味などを審査委員らが慎重に吟味してからの決定だそうだから、先ずは絶品な筈だし口福に浸れるのは間違いあるまい。本家筋に近い方に育った者としては、いささかの不満も残るけれどもここは熊本もっこすに勝利の美酒を譲ってもいい▼尤も、納豆の始まりは関西であり関東は後発部隊なのである。所謂―「大徳寺」や「天龍寺」などで知られる塩辛納豆の歴史が遥かに古い。恐らく中国に留学した仏教の僧侶らが製法を学び広めたものとされるが、これはお茶受けなどにも使われるしなかなかに風情に富む美味なのである。しかも、糸引きとは異なり冷蔵庫におけば二年や三年は腐敗せず味もしっかりとしている▼今ではサンパウロにいても日本の糸引納豆が手に入るようになったし値段も安いのがいい。糸も引くし粘りも強く「ナットウキナーゼ」も多いに違いないから大いに食べて脳卒中を遠ざけたい。 (遯)

04/02/17