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ルーラ大統領、インド訪問=有望市場として期待=ITで目覚ましい発展

2月19日(木)

 【ヴェージャ誌】中国に続く有望市場として、政府はインド市場に期待を寄せている。インド政府は経済改革や行政改革を矢継ぎ早に決行し、政府機構の抜本的な簡素化を敢行した。インドには中国にない別の魅力があると、大統領随行の側近らはインド訪問でみた。
(ほんぶん)

 インドは一九四七年まで、英国の植民地として臥薪嘗胆(がしんしょうたん)の思いで独立を図ってきた国。現在ではハイテク分野で、世界が注目する経済発展を遂げている。インドの産業革命や近代化、歴史的慣習の変革など、大統領一行はブラジルへの参考として息を飲むものが多かった。
 インドの市場開放や近代化は、中国や東南アジアの途上国より一足遅れた。インドは一九八〇年まで外国資本を規制し、多国籍企業は一部政治家にとって汚職の温床となっていた。
 IT時代を認識したインド政府は、半導体メーカーのインテル進出を受け入れ開放経済を実施した。半導体では現在、中国と覇を競っている。インドはインテルにとって、米国以外で唯一のIT基地。同社はインドで次世代半導体の開発に挑み、多くのインド人技術者を起用している。
 インド社会の所得格差は一九九〇年まで絶望的で、当地を訪れたブラジル人事業家はインド市場の将来性を疑問視した。インド人口の三分の一に当たる三億五千万人(ブラジルの二倍の人口)が、一日一ドル以下で極貧生活をしていた。
 大都市ムンバイ(旧ボンベイ)では街中に下層階級の人たちの死体が、動物のように放置されていた。カルカッタでは路上で生まれ生活し、住居というものを知らず生涯を終える人で満ちていた。文盲は三億人で、世界一だった。
 いまだにヒンズー教徒の間では一億五千万人の賎民が存在し、人間扱いをされない。しかし留学から帰国した知識人が、カースト制度をインドの恥部とし社会改革に挑んでいる。
 一九九五年からインドの経済成長率は平均で六%、ブラジルの三倍の経済成長を保っている。インドに一億人の中流階級が誕生、有望市場を形成している。
 インドの産業は、ほとんど多国籍が独占。それでも中国へ投下された外国資本五百億ドルに比較したら、四十億ドルで一〇%弱に過ぎない。インドでも中国方式を取り入れ、税免除の経済特区を創設した。
 インドはGDP(国内総生産)に対する税収が、一〇%(ブラジルは四〇%)。実質金利は八%(ブラジルは一二・八%)。国民の貯蓄率はGDPに対し二二・四%(ブラジルは一八%)。外貨保有高は千二十億ドル(ブラジルは五百三十億ドル)。インドは海外投資が途絶え輸出が止まっても、二年間は自己資金で債務を決済できる資産状態。
 インドで長年、国家経済を巣くっていた汚職や公金横領は民間企業内にとどまった。公務員の不正取引関与は、一掃された。
 政府の構造改革で特記すべきことは、高級官僚に技術系が多く実力本位で洗練されたことだ。ソフト分野での経済政策は、的を射ている。三世紀にわたる英国の植民地政策の影響で、理数教育の施策は周到。
 インドでは、年間三十万人が工科大を卒業する(ブラジルは三万六千人)。インターネットの分野でインドは、世界を圧倒している。光ファイバーによるIT通信網の設備では、シリコン・バレーもバンガロールも同一レベルにある。
 差はバンガロールの職員が、米国の五分の一の給料を貰うこと。ITサービスで百万人のインド人が、米系企業の下請けで就労している。ブラジルは雇用創出が国策で、途上国にとって絶好のチャンスにもかかわらず、まだ本格的な進出に至っていない。グロバリゼーションの波に、乗り遅れたようだ。