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ブラジルに巣食う麻薬=勢力強める犯罪組織=コカイン使用は7倍増

2月24日(火)

【エスタード・デ・サンパウロ紙】国連の、ブラジルと南半球の麻薬・犯罪対策局は六十一ページにわたってブラジルの麻薬・犯罪事情について報告書を作成した。それによると、ブラジルで一年間に発生する三万件の殺人事件のほとんどが麻薬の乱用、密売と関係があり、各殺人事件の背後には二十人から四十人の負傷者が存在するという。

 同報告書の中で、ブラジルの現状を分析した一人、クアグリーア氏は、〇二年の選挙では治安問題が国民の最も懸念する問題とみなされたと述懐した。同氏によると、特に大都市の貧困地区で教育、保健、住宅、警察、裁判所といった公共サービスが不十分であることが、犯罪組織による同地区の支配を容易にしているという。
 都市部では若者の失業者が膨大な数に上り、それが将来への不安と犯罪の温床となり、犯罪組織の勧誘を増やしていると同報告書は伝える。麻薬密売組織は「小型飛行機」と呼ばれる二万人の密売人を抱える。彼らの多くは十歳から十六歳までの若者たちで、正社員として得られる月収よりはるかに多い三百ドルから五百ドルを稼ぐ。利潤の高い「ビジネス」に加わる機会を伺う若者の予備軍は多数に上る。
 同報告書は数百万人に上るファヴェーラ(貧民街)の住民を低賃金のため他所に移動できない「まじめな労働者」と分析し、そうした住民の中には約二十万人の軍警、市警も含まれる。低賃金で働く彼らは、麻薬密売人や強盗団がたむろする地域に居住する。犯罪集団は警察よりも強力な銃器で武装しているという。
 麻薬の使用経験があるか、現在も使用している若者は上流層で二一・六%、中下流層で一六・五%。使用理由は、「家族や両親との問題から逃避するため」が最も多く(三五%)、「友人グループに受け入れられるため」(一五%)、「新しい快楽を試すため」(九%)があとに続く。「学校での犯罪」と題された小中高三百四十校を対象に実施された調査では、生徒の五五%が銃器と麻薬をどこで購入できるかを知っていたという。
 ここ数十年の間に、学生の間でアンフェタミンの使用は一五〇%、大麻は三二五%、コカインは七〇〇%増加した。コカイン取引の収益率は合法、非合法を含む他のどの商取引よりも高く、そのため、麻薬組織同士の抗争はますます激化しつつある。以前、ブラジルは先進諸国への麻薬密売ルートにすぎなかったが、現在は国内市場が沸き返り、拡大しつつある。
 国際犯罪組織はコカインと銃器の密売、資金洗浄のため、ブラジルの犯罪組織との関係を深めている。麻薬は銃器購入の支払手段としてますます利用されている。密売グループはブラジルの金融システムが資金洗浄に有利だとみなしている。
 コカイン、大麻、合成麻薬の使用が増加する一方、注射による麻薬使用率は九四年の二四・五%から〇二年の一三%に低下し、エイズ患者の割合も九六年の十万人当たり一四・八人から〇二年には一二・三人にまで低下した。これは九〇年以降、政府が国連、世銀、ユネスコと共同で綿密に図った対策が功を奏したためである。
 連邦政府は犯罪撲滅、刑務所の近代化、被害者・証人保護のため、三億八千三百万レアルの予算を配分して国家公安計画(PNSP)を策定した。しかし、国連は、さらなる犯罪対策が必要と評価している。