2月26日(木)
ちまたをにぎわすカルナヴァルの喧騒の中、静かな森の中で、もう一つのカルナヴァルが繰り広げられた。鳥のさえずりが聞こえる国士館スポーツセンターの森を抜けると、突然、ドロドロドロと雷のような音が響き始める。二十一日(土)から同体育館で、ブラジル太鼓連盟(渡部一誠会長)による初めての太鼓合宿が始まっていた。
「普段の練習と、合宿とでは全然違うんですよ」と太鼓指導のJICAシニアボランティア、小田幸久さんは、自主練習をする少年たちを目を細めながら見渡し、満足げに語った。「普段は三カ月に二時間だけでしょ。ところが、ここではじっくり教えられるし、共同生活を通して礼節を教えるなどの教育的効果が望めます」。
合宿に参加したのは、アチバイア、コロニア・ピニャール、ジュンジャイー、オザスコ、サンミゲル・パウリスタ、の太鼓チームから選抜された中心メンバー約六十人。体育館に寝泊りして、一泊二日の共同生活を送りながら、一日九時間もの練習をした。中でも後者三チーム代表約四十人は月曜日まで残り、さらに研鑚を深めた。
三~五世が中心の子どもたちの平均年齢は十五~十六歳。日系社会の将来を担う大事な層だ。
指導にあたるのは小田さんと、その助手の瀬戸佑麻さん(ゆま)さん、梅本善忠さんだ。日本で小田さんの指導を受けていた瀬戸さんは昨年十月に来伯した。
今回の合宿は、試験的に行われたもので、本格的な合宿受付けは三月から開始される。五月二十三日にブラジル日本文化協会の記念講堂で予定されている和太鼓ジュニア選手権を目指して、三月以降は、各地のチームが毎週のように合宿に参加することになると予想されている。
小田さんら指導者陣は、必ず一人以上が週末合宿に立ち会う予定にしている。合宿には送り迎えする父兄も泊り込み可能で、子どもらの食事の用意などを積極的に手伝っている。
小川彰夫同センター委員長も、「子どもたちが出入りすることで、国士舘にも活気が生まれます」と喜ぶ。通常は空手や剣道の合宿でたまに使われるのみの体育館だが、これからは子どもたちの明るい声が響きそうだ。
小田さんは、「休憩っていっても子どもたちが練習を止めないんですよ」と半ばあきれ気味にいう。「他のチームの上手な人を見ると、競争心が湧くんでしょうね」。上手な子どもが他の子どもを教える光景も見られ、地域を越えた交流にも大きく役立っているようだ。