イラクで起きたシーア派虐殺の爆弾テロは惨すぎる。宗教的な儀式に集まった信者たちの群衆に向けてロケット弾を打ち込んだの情報もあるし死亡した人々の数字もはっきりしない。犠牲者は百四十数人から百八十人余の見方などがあるのも現場が混乱しているために情報の確認ができないのでないか。犯人も凶爆の動機も不明▼イラクの国内事情は複雑で解かり難い。アラブ人が主流ながらクルド人が二〇%近くを占めトルクメン人やペルシャ系もいる。イスラムの国でもシーア派が六五%近くもいてスンニ派は三〇%前後とされる。モハメッドの従兄弟で女婿のアリーを正当な後継者とするシーア派はイスラム教の一〇%を占める少数派ながらイランを主流とし勢力は強い。先に逮捕されたフセイン前大統領はスンニ派に属しシーア派弾圧の重苦しい体験を持っている▼パキスタンでも「アシュラ」に参加のシーア信者に向けて何者かが銃を乱射し爆発テロもあって三十三人が死に追い込まれて百三十人余が重軽傷を負っている。こちらも犯人は不明ながらイラクと同じグループの犯行との観測が多い。イラク駐留米軍は二月に「国際テロがシーア派とスンニ派との対立を煽り、主権移譲を阻害する作戦」の機密文書を押収しているの事実もある▼これらの背景から旧体制派よりはイスラム過激派による凶悪な犯罪と見た方がいい。イラクに内在する宗教的な内部抗争を利用して政治的な動きを加速させようとの狙いが極めて強い。(遯)
04/03/04