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コラム 樹海

  秋が近い。朝市には小粒ながら柿が並び始め果物はうまい。日本から導入した梨「幸水」や「豊水」も本場を凌ぐほどの水っぽさと甘さが喉を潤して呉れる。その昔。ブラシルのは西洋梨ばかりで味覚では到底―母国の「二〇世紀」には遠く及ばないとしみじみ思ったものだ。それが十五年ほど前から日本人移民が栽培を始め今や見事な出来栄えである▼梨の栽培にはある程度の寒さが必要らしく、ブラジルでも南部の物が多い。リンゴで知られるサンタ・カタリーナ州のラーモス移住地の小川和巳さんも、梨栽培の先駆者の一人で二十数年も取り組んでいるらしい。「豊水」を中心にしていると耳にしたけれども、栽培の苦心は果てるともなく続いた。ここ数年はやっとサンパウロにも出荷するようになったが、それでも技術的な苦難は離れない▼日本へ専門家の派遣を要請しているとも聞いたが、もっと美味な梨が育成できれば、これに超したことはない。ラーモスの人々は小川さん始めリンゴ「富士」を生産するのにどれほど苦労をしたことか。もう三十数年も昔になるけれども、後沢憲志博士がブラジルに来たときにお会いした。リンゴ博士の後沢氏は「ラームスなら必ず立派まリンゴができます」と自信を込めて語っていた▼博士は指導者として現地に住み入植者らと共に辛酸しながらも「富士」を結実させることに成功し、今や花盛りである。あの苦しみを思えば―小川和巳氏の日本の味もきっと花を咲かせるのに違いないと信じている。 (遯)

04/03/11