3月16日(火)
【エポカ誌】ヴィットリオ・ファレッチさんは五十五歳になった。彼は今、長年の夢を実現しようとしている。その夢とはサンパウロ総合大学で哲学を学ぶことだった。
自動車会社で技術者として二十年以上勤めたファレッチさんは、夢をかなえるために一年間予備校に通い、必死に勉強した後、見事入学を果たした.
彼が入学を決断したのは、失業した時だった。今まで送ってきた、身をすり減らす毎日に再び戻るよりは自己実現の道を選んだのだった。大学入学は初めての経験だが、すでに大学院への入学を計画している。
「義務を果たすためにずっと働き続けてきた。家族があり、生計を支えなければならなかったから。朝六時に起き、夜一時に帰宅していた。もう義務は果たしたし、夢を実現して、いつか教壇に立つんだ」と、すでに読んだ哲学の本を見せ、二十三歳の娘が同じ大学の文学部の同僚になることを思い起こしつつ、ファレッチさんは穏やかに語る。
数年前はファレッチさんと同じ年代の人が若者に交じって大学に通う光景は奇異なものにうつっていた。しかし、現実は変化しつつある。
教育省の外郭団体、国立教育研究院(Inep)によると、四十歳を超える大学生の数は二〇〇〇年の五万五千二百九十七人から〇二年には九万百二十三人へと二年間でほぼ倍増した。この数は全大学生の六・四%を占め、そのうち、七万百三十八人は私立大学に通っている。人気が高いのは法学部で、教育学部、経営学部があとに続く。
問題は四十歳を過ぎて新たな仕事を見つけるのがそれほど容易ではないことだ。ある大手人材派遣会社副社長のシウヴァーナ・カセさんによると、四十歳以上の人が不利なのは、二十歳そこらで卒業し、給料が安い多数の若者と競争することだという。大学の増加に伴って専門家も増加した。例えば、研修生の採用は常により若い人が好まれる。一方、有利な点は熟練した専門職に求められる経験を持っていることだという。
また、四十歳を超えた人が大学生になることへの偏見もついて回る。「適応する必要があった。年長者だという態度をとると若者の反感を買った。中立的な立場を取るようにしないといけないことがわかった」と元エコノミストで、現在教育学を学ぶリッタさん(四八)は語った。
リッタさんもファレッチさんも、年を取ってから期待できるのは孫の誕生を待つことだけとまだ信じる人に別の生き方があることを問いかけようとしている。「求め続ける人に人生の終わりはない」とファレッチさんは締めくくった。