幸せになる条件を研究=「意欲」の専門家が執筆=マルチン・セリグマン氏 『新幸福論』出版
3月18日(木)
【ヴェージャ誌】マルチン・セリグマン氏は、「意欲喪失からの脱却」専門家であったが、幸福になる条件をその原因で研究した〃新幸福論〃(フェリシダーデ・アウテンチカ)をオブジェチーバ社から出版した。
次は、同氏の幸福論に関する一問一答を試みたもの。
【幸福度は数字で表せるか】幸福とはセックスの快感のようなもの、言葉や客観的尺度で表現するのは難しい。幸福と感じている人の血圧や免疫力、脳細胞を刺激するアドレナリン(快感物質)の量は検出が可能だから表現できる。
【幸福と金銭の関係は】生活苦にさいなまれるよりは、経済的余裕があるほうがよい。しかし苦闘の末、獲得した資産は幸福とは縁遠い。仕事の鬼となり家族の団らんを顧みず得た収入は、本人には満足だろうが、家族は幸福感がない。幸福と金銭の相互関係は、驚くほど低いもの。
【幸福と快楽の関係】幸福を求めるのに、即効性と遅効性がある。即効性は感情的な満足感を求めるが、起伏が激しい。平凡な人生より波瀾万丈型を好む人もいるから、どっちがどっちとは、いえない。
【かりそめの幸福は】美味い酒、素晴らしい異性と過ごすひととき、若い人におだてられるとき。これも人生にとって重要なひとときで、軽視してはいけない。心理学では、幸福感に遺伝的要素があるという。人間は幸福感を測る温度計を体内に持っていて、自分のタイプを選択できる。
【幸福になれる人、なれない人は】目的を達したとき自分の努力もあるが、運のよかったことを忘れてしまう人が多い。自分の甲斐性と勘違いして、欲を出す。ここからは運抜きで勝負するから、苦戦する。それは不幸との戦いなのだ。
【暗い幼少期を過ごした人に、明るい未来は】フロイドは、幼少期が人生を決めるという。否定はしないが、言い過ぎだと思う。幼少期の劇的事件で葛藤に陥るが、そこから抜け出す人と抜け出せない人がある。暗い過去を忘れることができるか、できないかにかかっている。過去の恨みを、忘れられるかと同じだ。
【幸福と美貌の関係は】一時的に美貌の主は有利だ。人生の長い時間から見たら、一瞬で幸福との関係を論じるにははかな過ぎる。
【幸福の素材は】もし素材があるとするなら、それは幻想だ。幻想は大きいほどよい。幻想は、本人にしか分からないもの。
【既婚者と独身者は】調査では幸福と答えた既婚者は四〇%、独身者や未亡人は二四%。既婚者には相互扶助関係が幸福感を養う。独身者は孤独と逆境を独力で克服するので、両者の幸福感は質が異なる。
【女性は男性より不利か】女性が落ち込む率は、男性より多い。それは女性が、感情の動物だからだ。この感情を肯定的に活用するなら、女性のほうが男性よりも率先力と行動力が秀でているので有利になる。
【高齢者と幸福は】低学歴の高齢者は惨めとされたが、低学歴者はそれなりの幸福な生き方がある。収入と幸福な老後とは無関係。
【宗教と幸福は】信仰している人には、麻薬患者や犯罪者、自殺者、離婚者が少ない。失望への対処法や達観した生き方を学ぶ方法を心得ている人が多い。
【甘えと幸福は】意欲喪失は、年々増えている。セックスや麻薬、流行の後追いなど刹那的快楽が、幻滅感をもたらすからだ。原因は甘えの構造、意欲喪失の原因を自家製造する。自助努力の欠落が、甘えを生む。自分のことに精一杯で、他人へ配慮する余裕がない。
【幸福になる行為】幸福は、自分の行為の結果としてもたらされる。特に夫婦間では、お互いに肯定的なキャッチ・ボールが必要。無意識のうちに、肯定的な行為が自然にできるもの。