3月19日(金)
十六日午前開かれた記者会見で明らかにされた百周年記念事業案『日伯学園大学(仮称)構想』は、従来のブラジル日本文化協会の機能はそのままに、空いた時間帯や部屋を有効活用することで、大学として生まれ変わる大胆な改革構想だ。前回までの構想では莫大な初期投資が懸念されていたが、すでにある土地、建物、人材を使うことで、最小限の費用で、最大の活性化を図るプランとして、数ある百周年メイン事業の中でも注目を浴びそうだ。
「文協も変わらなければ。そのための改革案です」と文協の日伯学園検討委員会、松尾治委員長は強調した。十四日の晩、同構想は文協理事会で説明され、百周年記念事業案締め切り最終日の十五日夕方、同祭典協会に手渡された。
同構想の骨子は、文協の旗印である「文化」に「教育」を加え、すでにある施設を有効活用することだ。メトロ駅から徒歩三分という好立地、大講堂、小講堂、体育館、図書館、駐車場、貴賓室、日本語コース、各種会議室などすでに備えており、それを大学に転用することで、大きな資金をかけずに収入を得る。
現執行部や評議会には、USP名誉教授の上原幸啓会長をはじめ、USP法学部教授の渡部和夫改革委員長、天理大学の元客員教授の吉岡黎明副会長など、教育界関係者が多いことは論を待たない。そのコネクションを活かして、優秀な教授陣を集め、さらに日本の大学との協力関係を結ぶことで、教授や交換留学生を派遣してもらい、独自の教育を実践していく構想だ。
全伯との兼ね合いを考えて「教育支援センター」が今構想に含まれることになった。支援センターは全伯に生まれつつある日伯学園的日系ブラジル校や、日本語学校を支援する。全伯から、生徒を迎え入れ、大学生活を送ってもらうことで、全伯団体とのつながりも強化される。すでに近隣にある日系ブラジル校との競合を避ける意味もある。
卒業生が将来の日系社会の担い手や、日本文化の理解者となってくれ、年が経つほど日系人や日本文化の存在感の増すような「社会的な仕組み」として機能するように構想された。
その視野の先には、日伯文化連盟(アリアンサ)やブラジル日本語センターとの合併も入っている。
また、デカセギ帰国子弟が、彼らの持つ日本語能力や日本文化に対する理解を失わせることなくブラジル学校に適応できるようなバイリンガル教育のメソードの研究・開発なども支援センターの重要な役割だ。
構想では、文協ビル内に十六教室を改修して作り、現在の日本語コースの八教室と合わせ、小講堂も授業に使うなどして、五百人収容の大学にする。日本語コース生徒(現在約四百三十人)も一千人に増やす。大学学生の受講料六百レアル、日本語コースを百二十五レアルとすれば、月に四十二万五千レアルの収入が生まれる。予想される諸経費を引けば、十三万五千レアルの利益が生まれると推測している。
初期投資は、教室、職員室、事務所増設に伴う改修費や、設備費などで合わせて五十万ドル。奨学金や不足時の運営資金として、五十万ドルの「教育基金」の創設も合わせて提言された。初期投資総額は百万レアルとなる。
岡野脩平委員は「まずは短期大学や、弁護士試験予備校や連邦や州のフィスカル試験コースなどの特殊な専門コースを設け、経済的な裏付けを作る。将来的には工学部を中心とした大学にし、日本の先端技術を学べるようにしたらいいのでは」と提言する。
松尾委員長は、「先人の残された建物などの財産、先人らの努力によって培われた子弟教育の賜物を、今後の百年に活かすための構想です。この構想を叩き台にして、みなさんで議論を深めて欲しい」と力強く語った。
十五日までに提出された百周年記念事業案は、同祭典協会のプロジェクト委員会によって審査され、二十七日の理事会で承認された後、四月三日の臨時総会にかけられ、〃コロニアの総意〃を得ることになっている。