3月19日(金)
ゆっくり休んだ一行はホテルのレストランでたっぷり朝食をとった。
その後浄土宗マリンガ日伯寺境内にあるパラナ老人福祉和順会(佐々木陽明理事長)が経営する和順ホームを訪問した。
同ホームは一九七五年設立。現在四十二名の身寄りのない人、家庭で介護できない人達を無料で入居させている。入居者はパラナ、サンタ・カタリーナ、サンパウロ州奥地からの人が大半を占めている。
同ホームの経費は会員、マリンガ市役所、クリチーバ日本大使館、JICや善良で篤志の市民の寄付で賄っている。また健康維持には十七名の医師が無料奉仕している。
しかしこの老人ホーム建設時には、「ダメな老人を増やす機会になる」、「これは日本人の恥」、「老人ホーム建設は州や市の責任」など、反対もあったが、二十九年経過した今では、州政府から日系唯一の公益事業に認定されている。
ホーム内は大変清潔で、照明も明るく、ゆったりしたスペース、車椅子などを考慮したバリアフリー、温泉気分が味わえる大浴場、リハビリ、体操場、それに大食堂が整備されており、一同が想像していた老人ホームのイメージを一掃した。また近い将来、非日系用にデイ・サービス施設を増築する予定。
開拓先没者供養が行われたマリンガ日伯寺(佐々木陽法住職)は一九七三年に建立。地元のバス会社社長岡本パウロさんが、日系先没者供養のために同寺の建立を要請、またアプカラーナの福島さんの木材(ペローバ)寄与、地元の信者の協力で立派なお寺ができた。
境内には水子地蔵がある。この地方はテーラ・
ロッシャの肥沃な土地だが、水はけが悪く雨が降るとぬかるんでしまい、お産や病気時に病院へ行けず、多くの赤子の命が奪われた。
昼食には佐々木陽明総監が得意とするカレーライスが振る舞われた。これは前日からじっくり煮込んだもので、お代わりをする人もいた。また最年長者、喜寿、最年少者に総監自筆の色紙が渡された。
昼食後、コカマール協同組合(ルイス・ロレンソ組合長)を訪問。同組合は四十年の歴史をもち、従業員三千人、組合員六千六百五十人をもち、各種植物オイル、各種ジュース、ケチャップ、マヨネーズ、絹糸などを国内外に出荷している。日系人はコチア産業組合破産後、加入しだした。
一行は生糸工場を見学。一個の蚕から一千二百メートルの糸がとれる。工場内は高温多湿で、女工さんが切れた糸を手際よく繋いでいく作業には、皆驚いた。 旅の最後の訪問先はサン・フランシスコ・シャヴィエール教会。
木村ヨシミ初代神父が一九五八年にマリンガに設立。ポルトガル語の解らない日本人達にカトリック布教をした。また一九六三年には、山焼きや開墾で忙しい父兄に代わり、日本人学校を設立し、日本語教育にも力を注いだ。今では付属幼稚園、コレジオを経営している。最後の夕食会はマリンガのシュラスカリアを借り切り、お互いに今回のふるさと巡りを回顧し
た。夕食後バスは一路サンパウロへ。翌朝二時間遅れでリベルダーデに全員無事に到着。お互い再開を誓い合って、家路についた。
最後に今回の「ふるさと巡り」では、「百聞は一見にしかず」の通り、開拓者の苦難続きの記録を目の当たりにし、今まで気にもしていなかった、日系人に与えられた最上のほめ言葉、「ジャポネース ガランチード」は先人の努力の結晶であり、この言葉の重みを再確認した。
この言葉を引き継いで行く次世代の人々も、先人の苦労を再確認することで、日系人のアイデンティティの確認や新しいヴィジョンが開ける。
北パラナ、「温故知新」のふるさと巡りに乾杯。(おわり・大角総丙記者)