3月20日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】サンパウロ州中央部にある小さな町に、刑務所二施設の建設が四月から始まる。その町の名はバウビーノス市。人口千三百十五人という自然豊かな美しい町である。だが、刑務所二カ所に収容される服役囚の数は千五百三十六人で、同市の人口を上回っている。囚人数が市の人口を上回るという皮肉な事態は、ブラジルで初めてのケース。国庫から建設費用が出される同市の刑務所建設にあたって、住民たちから賛否両論の意見が出ている。
エジ・カルロス・マリン同市長が刑務所建設を認めた理由は、同市の人口が年々減るという危機状態にあったからだ。「市には昨年まで千四百三十六人の有権者がいたが、地方選挙裁判所が数え直してみたところ、実はわずか千三人しかいないことが分かった。残りの人々は、他市に市民登録を移していた」と、同市長は説明。しかも、同市で投票を続けている有権者の一部は他市に在住している。
危機感に襲われたマリン市長はジェラウド・アウキミンサンパウロ州知事を訪ね、「バウビーノス市に工場を建ててくれないか」と頼んだが、返事は「今、唯一建設できるのは刑務所しかない」。同市長は「迷わず、刑務所二施設の建設を受け入れた」という。「わたしにどうしろと言うんだ? 五百人分の就職口がつくられるし、それプラス服役囚一人当たり毎月四十レアルの予算も得られるんだ」と打ち明ける。
サービス税(ISS)三千四百万レアル分を引いても、市に六十万レアル入る。同市市議十一人は、サンパウロ州に同市の土地二カ所の寄贈を可決した。
刑務所は同市中心部から二キロの場所につくられる。「服役囚を訪問する家族なども、この市で食事や宿泊などするはずだ」。
刑務所建設に向けて、刑務所職員三百人分の公務員試験が二十一日、バウルー市で実施される。バウビーノス市は受験者約三百人にバスを提供する予定。
一方、反対派の意見は、「犯罪発生率が上がるかもしれない」「刑務所ではなく、工場をつくった方が市民のためになる」というもの。同市は、月に平均二度被害届け出があるかないかという平和な町で、過去二十九年間に殺人事件はゼロ。同市の警察署の留置場は常にカラ状態。同市に元々あった刑務所は一九九八年から閉鎖されている。元市議や警察署職員などは、刑務所建設を深刻な問題と受け止めており、市長の父親は「息子は血迷ったことをしでかした」と嘆いている。