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大自然の民宿経営が夢=年間15%増の勢い=でも2年で半数が挫折

3月20日(土)

  大自然に囲まれて暮したい、と思う人なら一度は夢見るポウザーダ(民宿のような宿泊施設)経営。ブラジル・ホテル産業協会(ABIH)のデータによると、2001年からポウザーダが年間15%増の勢いで増えてきている。大都市に疲れた中流階層者の間で、「パラダイスでの起業」「夢のビジネス」として大人気。しかしながら、ポウザーダの経営はいいことばかりではない。甘い考えで起業した人が経営二年目までに挫折する確立は50%。見た目では分からないポウザーダ経営の「意外な厳しさ」について、経験者たちが語ってくれた。(フォーリャ誌2月29日)

 ブラジルでポウザーダ営業が始まったのは1980年代末から90年代初めの頃。現在、ブラジルにあるポウザーダの数は約6000軒、ホテルは1万8000店。ポウザーダとホテルの違いはその規模にある。ポウザーダはホテルより小規模で部屋数は多くて30部屋ほど。民宿のように家族経営が多く、顧客一人一人への応対に気を配る。
 ABIH小規模ホテル・ポウザーダ部のタウミール・ドゥアルテ部長は、「ポウザーダ経営は、中流階層の黄金の夢と化した」と断言する。彼自身、教員を辞めてポウザーダ経営を始めた一人である。「皆、自営を夢見ているが、昔と違ってバールやレストラン、都市部の大きな店では満足できない状況にある。そんな中でポウザーダは、天国のような自営業に最も近い業種として注目されている」。
 だが、旅館経営について何も学ばず、市場調査もろくにせず、ただ「海の近くにポウザーダをつくってのんびり経営」という甘い考えで起業した人には、〃ポウザーダ天国〃が逆に〃蟻地獄〃になる恐れもある。「FGTS(勤続期間保障基金)の退職金を下ろすだけで、バイア州海岸地方にポウザーダを開くことができると考えている人がいる。とんでもない勘違いにほかならない」と、ドゥアルテ部長は警告する。
 元建築家でポウザーダ営業者のカレン・ヴェントゥレーリさん(38)は、「友人全員が休み中、わたしは一番忙しいのよ。旅行に誘われても行けない。やっと休みが取れても、今度はみんなが仕事中なの」と、打ち明ける。
 後悔はしていないが、良いクオリティー・オブ・ライフ(QOL。生活の質)を得るにはそれだけの代償を払わなければならないと悟った。カレンさんの場合は「孤独な生活」だった。「社会的な生活が懐かしい。映画や展示会に行ったり、本屋やCD専門店で好きなものを買ったり、流行の服を選んだりしたいわ。わたしはまだ若い。もっと画期的な生活がしたいの」。
 ポウザーダは休暇の時期には満員になるが、それ以外の時期はがら空きだ。「計画性がなければポウザーダ経営は成り立たない」と、ドゥアルテ部長は指摘する。
 元企業経営担当のワーナー・ベンツさん(30)は、2年間にわたって市場調査を重ね、ポウザーダ経営についてコンサルタント業者の指導を受けた。そして96年、ついにサンパウロ州(サンパウロ州)イリャベーラ市でポウザーダを起業。家族もこれまでの事業をやめ、経営を手伝った。
 「夜も明けないうちに起きて、従業員がいても全部自分でチェックし、問題が起きても笑顔を忘れてはならない。それが観光業だ。ポウザーダが自分のすべての問題の解決策だというのは甘い。経済的に豊かにならなければ、QOLはないに等しい。経済面で豊かになるには、血のにじむ努力が必要だ」と、ベンツさんは語る。
 ベンツさんのポウザーダの顧客のうち、20%が外国人だが、これは、観光のオフ期に世界四カ所の観光見本市に参加してポウザーダのアピールを怠らない、ベンツさんの努力の成果だと言えよう。「見本市に出展する時を利用して少し休むが、ポウザーダの近くに映画館がないのはつらい。でも、ムカついた時にはいつでも海に潜れるという利点はあるけどね」。
 エコノミストのマーリオ・A・フェラリーニさん(49)は、1997年からサンパウロ州サンセバスチオン市でジュケイー・プライア・ホテルを家族とともに経営しており、2003年に隣りのバーラ・ダ・ウーナ海岸でポウザーダ「エスタラージェン・ド・ピーエル」を開業した。「オフ期には、商店街はすべて閉まっており、たった一人取り残されているという、うつな気分になりやすい。そういう時は、旅行したり、ポウザーダのリフォームをしたりして、脳みそに新鮮な酸素を送り込むといい」と、アドバイスしている。