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日本から世界の桧舞台に=大喜びの在伯家族=田中マルクス闘莉王=〝日の丸戦士〟として=アテネ五輪予選通過

3月23日(火)

  やったぞ、日系初の大舞台だ――。先日のアテネ五輪最終予選で奮闘し、見事本大会出場を決めたサッカー日本五輪代表。史上初めての三大会連続出場を決めた二十三人の「日の丸戦士」の中に、日系三世がいる。昨年帰化したばかりの田中マルクス闘莉王だ。守備の要として大活躍した闘莉王が、日本の原動力の一つだったことは紛れもない事実。故ネルソン吉村とジョルジ与那城の二人の先輩日系人が果たせなかった世界の大舞台出場に貢献したブラジル生まれの日本人。日伯両国に喜びの輪が広がった。

 「ベンチにいる闘莉王のすぐ後ろで大喜びしていたんですよ」。闘莉王の「日本の父」とも言える宗像マルコス望さん(四五)はニッケイ新聞の電話取材に対し、声を弾ませた。
 千葉県渋谷幕張サッカー部監督で、日系二世のマルコスさんは十六歳の闘莉王を見いだした恩師。三年間のサッカー部時代には、プレーはもちろんのこと、日本語や生活全般について面倒を見た。
 五輪予選の日本ラウンドは、一試合を除き全て闘莉王が入場券を手配し、マルコスさんら学校の恩師を招待していたという。
 予選最終戦のUAE戦は、怪我でベンチに座る愛弟子の約二十メートル後ろで観戦したマルコスさん。「ベンチで声を出しながら、一喜一憂するのが見えた。出場が決まって本当にうれしい」と喜ぶ一方、闘莉王には「肉離れは癖になるので、慌てず直せ。必ず本番にも呼ばれるから」と助言をしたという。
 予選が始まる前から闘莉王のプレーを高く評価していたマルコスさんは「あの子が怪我で抜けた二試合で、その存在感の大きさが分かったのでは」と闘莉王の活躍を振り返った。
 一方、母国ブラジルでは「生みの親」が息子の快挙に笑顔を見せた。
 サンパウロ州パウメイラ・ドオエステ市に住む二世の父、パウロ隆二さん(四五)は「日本人の子孫として、息子の活躍を誇りに思っています」と日系初の快挙に胸を張った。
 予選直前の親善試合は、送ってもらったビデオで観戦したが、予選はニュースで結果を追い続けた。ただ、出場が決まったUAE戦直後は、渋谷幕張関係者から電話連絡を受けたという。「息子からは試合後毎回、電話連絡受けていた。家族みんなで喜んでいます」と喜びを語った。
 また、闘莉王を溺愛する祖母の照子さん(七六)は現在、病気療養のためリオデジャネイロ市内に滞在中だが、代わって祖父の義行さん(八六)が「本大会までに怪我は治るのかね。それだけが心配」と早くもアテネに思いを馳せていた。
 ミュンヘン、モントリオールの五輪を目指した故ネルソン、メキシコW杯を夢見たジョルジのいずれもが踏めなかった世界の桧舞台。一九七一年に始まったネルソンの挑戦以来、三十年を経て日系ブラジル人が切符をもぎ取った。怪我が回復して、本大会でも活躍すれば次は二〇〇六年W杯ドイツ大会も見えてくる。