ホーム | 連載 | 2004年 | 日本の若者ブラジルで将来を模索 | 日本の若者ブラジルで将来を模索(3)=梅本善忠さん(24)=布教、まず種を蒔く=日本の親類に「移住」を伝えた

日本の若者ブラジルで将来を模索(3)=梅本善忠さん(24)=布教、まず種を蒔く=日本の親類に「移住」を伝えた

3月26日(金)

   「ブラジルはカトリックの国だけど(私の)話を聞いてくれる。日本は話すら聞いてくれない」と日伯の違いを語るのは梅本善忠(二四、奈良県出身)。二〇〇〇年八月から来伯し、メトジスト大学に入学、ポルトガル語を磨いている。「まだ教えが広がっていない場所で(布教を)やり、独立したい。僕が出来るのは種を蒔くくらい。そのあとに、日本人なり、日系人なり、誰かがついて来てくれれば」。彼は天理教の布教師だ。
 一九九八年に高校卒業後、梅本は天理教語学院・TLIで一年間ポ語を学んだ。「なぜ、ポ語なのか、ブラジルなのか自分でもはっきり言って分からなかった」と当時を思い出す。しかし、ブラジルで生活し、愛着を感じていくうちにブラジルに運命的なものを感じた。今では「ああ、神さんが導いてくれたんだな」と思うようになった。
 現在、梅本は大学で宗教学を専攻している。全てポ語なのは勿論で「集中していないと、授業に置いていかれる」と大変な様子。宗教科を選んだのは、恩師で”先生”と慕う故渡辺次男・同学園館長の「ブラジルの主流であるキリスト教を学んで、(天理教と)比較する必要がある」との勧めからだった。
 〇〇年に来伯し、〇一年十二月に受験し合格。受験科目は、ポ語、歴史、宗教関係の問題、英語(スペイン語と選択可)、レポートだった。推薦ではなく、一般入試と言うから驚く。「歴史だけは分からない部分が多かったから、寮の友人に協力してもらった」と振り返る。
 大学で勉強に打ち込むかたわらで太鼓を指導。アルモニア学園で〇二年から、およそ百人が相手だ。中心に指導するのは二人だけのため二十人ずつほぼ毎日指導を行う。「生徒はこれからも増えていきそう」と太鼓熱に驚く。太鼓の技術は、教会で修得したドラムのリズム感が役立っていると明かす。
 現在日本全国に、天理教の教会はおよそ一万七千カ所。梅本の実家も、そのうちの一軒だ。「天理教に反発した時もあった。でも、布教は自分で選び取った道」と、高校時代に布教師を目指すことを決めた。
 梅本は奈良県の天理高校卒業後、二十一歳で後期の講習会をへて資格検定に合格。晴れて、教会長の資格を獲得し、自分の教会を持つ資格を得た。日伯双方で、布教のためにポ語や教えを学ぶ日々。大学などで遊ぶ同世代に対しては「羨ましくは無い。自分で決めたことなので後悔はしていない」と言い切る。
 現在大学二年生、親類にはすでにブラジルに移住を決めたことを伝えている。「どこかの教会に入るのは考えていない。単独で布教する」。梅本の目は、まだ見ぬ世界を見つめていた。(敬称略)
    (佐伯祐二記者)

■日本の若者ブラジルで将来を模索(1)=井出勝太郎さん(24)=家庭環境があと押し=サッカー・コーチ修業中
■日本の若者ブラジルで将来を模索(2)=市原裕子さん(23)=デカセギ帰国子弟と交流=国際学級で指導したい
■日本の若者ブラジルで将来を模索(3)=梅本善忠さん(24)=布教、まず種を蒔く=日本の親類に「移住」を伝えた
■日本の若者ブラジルで将来を模索(4)=今村拓弥さん(26)=貿易会社をおこす=あらゆる国と取引を
■日本の若者ブラジルで将来を模索(5)=渡会環さん(29)=ガウーショとYOSAKOI=この国解明したい
■日本の若者ブラジルで将来を模索(6)=若山達也さん(25)=ブラジリアン柔術に魅せられる=日本に帰って道場を
■日本の若者ブラジルで将来を模索(7)=命かけて働ける対象=見えたのは消防士=山内和歌子さん(21)
■日本の若者ブラジルで将来を模索(終)=佐々木弘文さん(27)=お寺、檀家ないのが理想=「来たい人が来ればよい」