3月27日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】今、サンパウロ市南部ヴィラ(V)・マリアーナ区が、建設ブームに沸いている。過去五年間に四十六の建設事業が始まり、計五十棟もの住宅ビルが同区に立ち並んだ。イビラプエーラ公園やインスチトゥット・ビオロージコ(バイオ研究院。サンパウロ州農務配給局直轄)、数多くの広場など、緑に囲まれる美しい地区であり、同時に地下鉄や主要道路など交通の便も充実しているのがVマリアーナ区の人気の理由。また、建設会社がこぞって同区での事業に取り組むのは、同じく住宅ビルが多いモエーマ区より地価が安いからである。だが、同区の住民の間では賛否両論、意見が分かれている。
Vマリアーナ区の〃モエーマ化〃が始まったのはつい最近。二〇〇〇年の時点では、モエーマ区の方がVマリアーナ区より建設事業が多く、一平米当たりの地価の差もモエーマ区の方が三百レアル高い程度だった。
だが昨年、この事態が逆転。モエーマ区の地価は四千四百七十二・五レアルに跳ね上がったが、Vマリアーナ区は二千七百五・六八レアルと〇〇年のモエーマ区の地価より安く、建設業者の投資意欲を駆り立てている。
しかもVマリアーナ区にはまだ、自然が多く残されている。住民の心を癒す場所は売れると業者が躍起になるのも無理はない。
一方、高層住宅ビル建設に反対している人々は、高層ビルが街の外観を損ない、クオリティー・オブ・ライフ(QOL。生活の質)が下がることを懸念している。「これまでのんびり過ごすことができた街が急激に変わっている。昔はうちの窓からイビラプエーラ公園のオベリスクや湖が見えたが、今ではビルに囲まれ、日当たりも悪くなった」と、住民のエドゥアルド・A・シウヴァさん(二三)は訴える。
同じく一軒家に住む同区民のマリア・A・シウヴァさん(主婦)は、「家からコンゴーニャス空港が見られたのに、今では高層ビルが視界を塞いでいる。Vマリアーナの一軒家はコルチッソ(低所得層集合住宅)のように扱われている」と憤る。
反対派の住民の中には、すでにサンパウロ市が重文として保存しているバイオ研究院から、半径五百メートル範囲の地区も重文に指定する計画案を出した人もいた。都市計画専門家のカンジド・マウタ氏は、この範囲のビルの高さを制限する計画案を市議会に提出する予定。
対して賛成派は、同研究所周辺を重文に指定する案に反対する横断幕を区内に張った。この地区に住むガストン・モラット弁護士はその一人。「こんなところでは商売が成り立たない」と嘆いている。