3月27日(土)
サンパウロ市中心部ラーモス・デ・アゼヴェード広場にあるテアトロ・ムニシパル(市立劇場)は、市内でも最も美しい建築物の一つである。だが、劇場内部を知る市民は意外と少ないという。市立劇場では、ガイド付の〃劇場めぐり〃を楽しめる。
ガイドの一人はレーダ・ドゥアルテさん(六〇)。同劇場の理事長であり、劇場ガイド二十年のベテラン案内人だ。一九七七年から市立劇場で働き始めたレーダさんは、市立劇場について何でも知っている。同劇場のデコレーションの一つ一つがどこにあるのか把握しており、劇場の主な歴史だけではなく、小さな出来事まですべて覚えている。
彼女はまた、サンパウロ市の歴史遺産とされる同劇場を守ろうと必死に訴えている。劇場前の噴水で入浴したり、花を根こそぎ引っこ抜いたりする人たちを見ると、ホイッスルを吹いて怒鳴るという。「市立劇場を壊すようないたずらをする人は、わたしが許さないわ」と断言する。
レーダさんの市立劇場めぐりは、劇場の歴史から始まる。一九〇三年、ヨーロッパ移民でごった返していたサンパウロ市には、彼らが大好きなオペラを観るような場所がまだなかった。当時、ブエノスアイレスのコロン劇場でオペラを観るか、船に乗ってヨーロッパの大劇場へ出向くしか方法がなかった。
ブルジョア層はサンパウロ市にも大劇場をつくりたいと、当時のアントニオ・プラード市長に詰め寄った。そして、パリのオペラ座のレプリカである市立劇場建設プロジェクトがたちあげられ、建築家ラーモス・デ・アゼヴェードが主任となった。
「新築落成式は九月十一日の予定でしたが、オペラ劇団『Titta Ruffo』が、アルゼンチンから届けられるはずの舞台装置や衣装などが間に合わず、式は延期になりました」と、レーダさんは説明する。最初のオペラはシェイクスピアの『ハムレット』だった。
ガイド付市立劇場めぐり(ヴィジッタ・モニトラーダ)の問い合わせは電話(11)223・3715番まで。訪問日程を予約できる。
(ジアーリオ紙系ジャー誌二月一日)