3月31日(木)
前代未聞のゴタゴタで、「コロニア御三家」としての信用を失墜させた県連。二十六日の定期総会では、二十三対二十一票で辛うじてシャッパが信任され、中沢宏一会長の再選が決まった。ただ、一票の僅差からも分かるように今後、新執行部が慎重な運営を迫られることは確実。中沢会長の舵取りが注目される。また、役員選挙を巡る定款の解釈について、中沢会長が招いた弁護士が会場に登場した揚げ句、出席者の意志により退場を迫られる異常事態も発生した。役員選挙を巡る問題点と今後の課題を改めて検証する。
今年一月の臨時総会で改正された定款、第十一章は選挙について規定する。
〈四十一項、選挙管理委員会は五人からなる。四十二項、執行部はシャッパ制で選ばれ、十日前までに提出すること〉
舵取り役となる執行部を選出するには余りにも、短く抽象的な文言だけが並んでいる。単独で出されたシャッパの解釈や選管委の権限を巡って、総会でもめた一因がここにある。
「具体的な選挙方法も、シャッパの提出先も何も書かれていない。これじゃ今後も揉めかねない」と選管委員の一人、網野弥太郎顧問は指摘する。実際、文協や援協は、選挙について具体的に定款で定めている。
選管委の権限や役割、具体的な役員選出方法について、きっちり規定する必要がある。賛成票二十三、反対票二十一、無効票一となり、辛うじてシャッパが承認されたが、もし賛成票が一つ反対に転じていれば、賛否は同数。開票後に、紛糾と混乱を招いた可能性も見逃せない。
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「弁護士を同伴させるなんて噂を聞いたがそんなバカな。我々を舐めきっている」。二十六日の総会当日、羽田宗義選管委員長は、定款の解釈を巡り弁護士を連れてきた中沢会長を前に、怒りを露わにした。
中沢会長が選管委に申し入れた文書には「シャッパが一つの場合、一票でも賛成があれば承認されるべき」とある。十六日の締め切りまでに対抗馬の吉加江ネルソン副会長(当時)がシャッパを出せなかったため、中沢会長は完全に再選を信じて疑わなかった。
これに対し、選管委が出した結論が、シャッパの信任投票だった。網野顧問はキッパリ言う。「これまでの会長は皆、総会で承認を受けて支持を得てきた。信任で是非を問うのは当然」
総会の場で、自らの見解を主張しようとした中沢会長だが、「弁護士の見張り付きで選挙をするのか、どうか」と賛否を問うた羽田委員長に対し、圧倒的多数の県人会長が「退出」を要求。苦渋の表情を見せながら中沢会長は、弁護士を外に連れ出した。
「県連は何でも自分たちで、解決してきた。外部の弁護士に意見を聞く必要があるのか」と、不快感を示した大西博己広島会長が、大半の県人会長の意見を代弁したはずだ。
ただ、従来は単なる親睦団体だった県連も、フェスチヴァル・ド・ジャポンのような巨額の金が動く事業を主催する上、県人会長もその三分の一が二世に移行している。「二世は何事も定款や法律解釈にこだわりがち。こんなお粗末な定款では何かと揉めることになる」とはある一世会長。
不十分な定款が、異例の弁護士介入を招く一因になったのは否めない。
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「選管委がもめ事の一因じゃないの」。総会当日、複数の県人会長からこんな言葉が聞かれた。県連史上、初めて設置された選管委は三人の顧問と二人の相談役で構成、一月の代表者会議で承認された組織だ。
これについても定款では〈五人で構成する〉とあるのみで、具体的な役割には触れていない。
「何も定められていないから、我々が考えるしかないでしょう」と網野委員らは数回に渡り、委員会を招集。シャッパの扱いや信任方法について頭を悩ませてきた。前代未聞の○×式の投票を決断したのも、県連の将来を考えてのことだ。
信任投票の是非だけでなく、選管委の権利についても総会では紛糾した。
「顧問は投票権を持つとはいえ、選挙に関わる立場で投票するのはどうか。皆さんの意見を聞きたい」との羽田委員長は問題提示。 「投票は遠慮すべき」と反対した竹下康義副会長に対し、「定款は顧問の投票を認める。とやかく言うのはおかしい」と林アンドレー愛知会長が反論した。
結局、定款通り顧問も投票したが、選管委の役割と権限をキチンと定義付ける必要がある。
(つづく、下薗昌記記者)