4月14日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日】リオデジャネイロ市のスラム街ロッシーニャの騒動が十人目の犠牲者を出したことでバストス法相は、この騒動は都市ゲリラ化したと見なし、十二日にルーラ大統領とマテウス・リオ州知事と打ち合わせ、必要とあれば陸軍の出動も容認すると表明した。リオ州知事は、陸軍の出動を要請した昨年のような事態には至らないと述べた。異常事態の兆候があれば、連邦政府は事態鎮静化のため出動・介入の用意があると大統領は約束した。
法相は十二日、ルイス・F・コレイア国家保安局長官をリオへ派遣し、南東部治安部隊の協力を得て事態を監視するよう命じた。連邦政府は麻薬問題に、政府と州の合同作戦で対処することにしている。連邦警察情報部は三十日前、ロッシーニャ・スラム街を中心とする地域の不穏な動きを、リオ保安局へ通告した。
州保安局も麻薬密売者の動きは事前に察知していたが、彼らの縄張り争いにあえて介入しなかった。結果として、市民十人の犠牲者を出すことになった。当局は市民のやり場のない怒りも理解できるが、軍警の犠牲を最小限に食い止めるのが精一杯だという。
リオ州のコンデ副知事が、スラム街を封鎖する壁を建設するスラムのゲットー化を提案した。これは、ミランダ人権相や法相から人権侵害と批判された。生存競争から落ちこぼれた下層階級の一部過激なはね返りのために、貧困層全般が差別されることには異論が多いようだ。
ロッシーニャ住民協会のオリベイラ会長は、壁建設に賛成の意を表明した。縄張り争いが避けられ、鎮圧も容易だという。町内会では、州政府への壁建設要請を話し合うことになった。
しかし、壁が建設されるとバングー刑務所の一部とみなされ、麻薬業者の支配下に入る恐れがあるとする強い反対意見もある。縄張りがハッキリする反面、壁の中側は麻薬業者が我がもの顔で闊歩し、刑務所の中と同じ弱肉強食の世界になるという。
善良な市民も居住するスラム街の治安問題は、国家治安法からスッポリ抜け落ちている。チジュッカの森が日々不法伐採され、スラム街は日夜膨張している。当局の対策よりも早い速度で、スラム街と犯罪の巣は広がっていると副知事は述懐する。
騒動は九日に始まり、十二日までの死者八人に加えて麻薬業者二人が射殺され、計十人となった。軍警は千三百人が出動、同州では過去最大規模の作戦となった。しかし、銃声はなり止む気配がない。騒動の鎮圧に派遣されたホッツ中佐は、産業用ゴミ箱の陰で指揮を採っていた。
スラム街の騒動は他地区のモーロ・ミネイラとサンカルロスへも飛び火した。両区は、ジンコ区の争奪を繰り返していた。付近を巡回中のヘリが、丘陵付近で麻薬密売者の機関銃に被弾し緊急着陸した。搭乗していた大尉と軍曹が入院。一命は取り留めた。麻薬密売者らは、自家製の手榴弾を数多く作っていた。