4月16日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】中央銀行の通貨審議会(COPOM)は十四日、基本金利(SELIC)を〇・二五%引き下げ、年利一六%にすると決定した。中銀は、インフレ動向を考慮しての措置と発表。生産部門からは思い切った引き下げを求める圧力があったが、今回も期待に沿わず、引き下げ幅は慎重なものであった。ブラジルは基本金利引き下げで実質金利が一〇%、トルコに次ぐ世界第二位となった。
基本金利(SELIC)は年利一六・二五%から一六%に下がり、〇一年三月の水準となった。昨年十二月から三カ月据え置かれ、ようやく三、四月と僅かだが連続で引き下げられた。今回の決定は金融市場の思惑に沿うたもので、経済の活性化を渇望する産業界の期待を再度裏切った。
高金利政策が続く間、産業界の新規投資は望めないと企業家はいう。銀行は企業への融資より、国債購入のほうが有利とされる。国内市場への銀行融資は減り、銀行のスプレッド(金利差)取引が活況を呈するので消費市場も萎縮し、産業界に悪循環が始まるという見方だ。
年間インフレ率を差し引いた実質金利は、一〇・二%から一〇%へ下がった。これで世界最高の高金利国の称号を、トルコへ譲った。それでも南米諸国の間では、抜きん出ている。チリが二・五%、コロンビアが一・五%。南米四十カ国の平均は、二・二%。途上国の平均は、四%だ。
企業家の新規投資を呼び込むには、基本金利を八%まで引き下げる必要があると産業界はみている。現行政策が続く限り、投資家の資金は生産部門から金融部門に向かう。雇用と勤労者所得は悪化する。基本金利とインフレの関係でいうなら、中銀は角を矯めて牛を殺すという。
中銀の措置を評価する向きもある。慎重な引き下げは、やがて功を奏するとみている。経済の活性化もインフレの沈静化も不確かな中、〇・五%の切り下げは危険だという見方だ。インフレの下降傾向が続くなら、五月に経済活性化のため、〇・五%下げる可能性はあると銀行界はみている。
外的要因をみるなら、米国のFRB(連邦準備制度理事会)は十三日、公定歩合の引き上げを示唆した。ブラジルの工業生産水準が低いので、カントリー・リスクが予想以上に上昇した。この背景が政府のマクロ政策にどう反映するか注目されている。
景気低迷の悪役を、中銀総裁と財務相に負わせるのは卑怯だという見方もある。低金利政策が景気回復の万能薬ではないという。基本金利を一二%にしても、七〇年代の奇跡は起きない。奇跡の通貨政策は近年、何度も失敗した。
ブラジルの常識の範囲で基本金利は引き下げられたが、景気は一向に浮上しない。これは高金利政策が、景気低迷のただ一つの要因ではないことを示している。経済が泥沼から抜け出すには、投資というバネが欠けている。有利な投資と回収を政府が保証し、投資家の信用を回復しなければ経済活性化は戻って来ないといわれる。