4月21日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】全国各地に展開する社会運動の過激化を受けルーラ大統領は十九日、ブラジルは法治国家であり、大統領も農地未所有の農民、地主に至るも法は平等に適用されると警告した。表現の自由は認めるが、そこに責任が伴うことを忘れないよう忠告。過激活動は誰からも支持されないことは、自身が体験済みであると述べた。ボルンハウセンPFL党首は、最近の混乱状態を〃ルーラ現象〃と命名した。
大統領は過激な社会運動家に助言するとして「天井に向かってつばをはけば、自分の顔に戻ってくる。無責任な言動を謹め」と叱咤し、農地不法占拠運動(MST)が三日間に、農地改革法の枠を越えて七州の九十四カ所を占拠したことをけん制した。
サンパウロ市ではMSTに呼応したように、五カ所で建造物への不法侵入が行われた。家屋侵入には四グループ、七千人が参加した。またサントスやカンピーナス、レシフェなどでも家屋侵入が行われた。アウキミンサンパウロ州知事は〃赤い四月〃は農村部だけでなく、都市部も含まれているとした。州政府は狼藉には容赦しないと同知事は宣言した。
家屋侵入を働くグループは〇三年、サンパウロ市中心部の建造物を狙ったが、今回は拠点に集合するに留まった。同グループはクリチーバやテレジーナ、ゴイアニア、その他の都市で近日中にも一斉蜂起をすると通告した。すでに未利用の公有地を調べてあり、そこへスラム街を造る計画という。建造物への不法侵入は五月十二日まで、継続すると予告した。
PFL党首は、国内の秩序安定のため大統領は毅然と対処して欲しいと訴えた。サンタカタリーナ州のクラビン植林場の占拠では、政府は全く関与せず、MSTを看過したと同党首は抗議した。大統領の優柔不断な態度が社会混乱の原因であるとして、社会不安をルーラ現象だと呼んだ。
クラビン植林場占拠のような企業資産への不法侵入は、生産中の農場占拠も頻発する前触れだと同党首はみている。ロセット農地改革相やハックバルト農地改革院総裁は、MSTと同じ穴のむじなだと同党首は糾弾した。大統領は事後処理を閣僚らに一任するとし、撤去の強制執行はないと宣言した。
クラビン製紙の株主でサンパウロ州工業連盟(FIESP)のピーヴァ会長は十九日、MSTの狼藉を非難した。
不法占拠は単なる社会混乱だけでなく、国際的にもブラジルは無法地帯の印象を与え、海外投資家が敬遠するようになると述べた。〃赤い四月〃が脅しから実行に移り、不法占拠が起きる毎に、外資のブラジルからの逃避を政府は認識すべきだと訴えた。
社会学者らは、一連の混乱が政府の政治力不足を印象づけると評した。官憲当局への抵抗がまかり通り、法治国家としての秩序が失われた空気が国中に漂っている。MSTの振る舞いは無法者のそれで、第二、第三のMSTが続出し市民は自衛を余儀なくされるようになる。問題は、社会秩序の変革を旗印としてきた労働者党(PT)の体質にあるという。