建設するときは〃鳴り物入り〃だったが、役目を終えると、ひっそり処分の方法が検討されているもの――日系社会の学生寮だ。大学のある町に、JICA(国際協力機構)などの協力を得て、ひところ先を争うかのように建設された。学生の数は減っていないのに、世の中の事情が変わったせいで、寮を利用する人が少なくなった▼日系子弟に限定していたのが、非日系にも門戸を広げた。寮規律違反などさまざま問題が発生していたことも仄聞した。諸事情がある中で、学生寮にとって致命的なのは入居する人がいなくなることである▼学生寮の建物は意外とつぶしのきかないもので、〃休業〃してしまうと、ほかの用途がなかなか見つからないらしい。貸家として出しても、おいそれと借り手が現れない。雇用していた職員に対しても、退職手当の支給を行わなければならない。残務処理も容易でないのだ▼思えば、一世が子や孫のために、懸命に寮を建てようとしたころが最盛期だった。一世が舎監兼管理人をし、躾(しつけ)などを受け持った。いわば時代の要求に沿ったのだ。学生たちの懐具合がひところより若干はよくなり、舎監が老いたとほぼ同時期から学生寮の需要減、つまり衰退が始まった▼移民百周年祭の記念事業に箱モノ建設がある。学生寮と同一視できないものの、将来、本当に需要と供給のバランスがとれているか、慎重に考慮する必要がある。その箱モノが容易に建てられるとは思えないが。 (神)
04/04/21