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ミナスのシリコンバレー=田舎町にIT企業107社集中

4月28日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】ミナス・ジェライス州サンタリッタ・デ・サプカイ市が、ミナスのシリコン・バレーとして注目を浴びている。人口は僅か三万五千人で素朴な田舎町だが、IT企業百七社が集中している。
 同市の労働人口の三五%に当たる六千三百人が、IT要員として採用された。市側はIT産業振興を目標に掲げ、学校の科目にIT科を取り入れ、職業指導所なども設置した。同市は現在、市の歳入十億レアルの半分をIT産業で賄い、同工業団地をエレトロニック・バレーと命名した。
 同市はベロ・オリゾンテ市とサンパウロ市、リオ市の中心地点に位置し、周囲にカンピナス、サンジョセ・ドス・カンポスの工業都市も控えた有利な立地条件に恵まれている。ブラジルのIT産業は、原料部品の七〇%を輸入品に頼っている。国道フェルナン・ジアスは、同市の生命線でもある。
 同市最大の企業は、台湾系のFIC社。同社はブラジルヘ進出して二十年になる。サンパウロ州バルエリー市に初めて、工場を建設して携帯電話用の部品を製造した。しかし、バルエリー工場は九八年まで生産が軌道に乗らず、二千万ドルの赤字を出し閉鎖した。
 サプカイ市には電子工学が専門のモレイラ工業学校やテレコン国立研究所、経済大学にIT専科がある。文化環境はミナス州では最高、研究要員、新規開発要員を容易に調達できる。市はIT関連部品の製造企業や合弁企業の進出を奨励している。その他に市は、財政的にも色々配慮している。
 FIC社はバルエリー市で、工場の借家料を十万レアル払った。サプカイ市では九千レアル。セキュリティはバルエリー市が五万レアル、サプカイ市は市の提供で無料。従業員は全員徒歩で通勤し、食費は一人三・五レアルで高級料理が供される。
 新しく進出した企業に同市は二年間、家賃無料の建物を貸す。有望視される企業には、さらに三年間、家賃を補助する。五年継続した企業には、市が工場用地を無料提供する。工場建設にはミナス開発銀行の融資を、市が斡旋する。市税恩典もある。三百品目にはミナス州政府が、州内に限り流通税(ICMS)を免除する。
 同市の企業はFIC社を除いて、まだ地元の零細企業ばかり。三月には、中国やドイツ、スエーデンの企業家視察団を迎えた。
 同市のエレトロニック・バレー産みの親は、モレイラ駐日元ブラジル大使のルジア夫人。三〇年代に滞日した時、故郷の同市をIT都市にする構想を日本で練ったという。五九年に南米で最初の、電子工学専門のモレイラ工業学校を設立した。同市に次々設置された電子工学専門学校は、同工業学校が母体といえそうだ。