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綿補助金問題 米政府、対伯報復へ=通商代表が発言=途上国の結束に”くさび”=伯外相は楽観予測

4月30日(金)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十九日】米国通商代表部(USTR)のロバート・ゼーリック代表は二十八日、綿補助金制度が世界貿易機関(WTO)で貿易ルール違反と判断されたことを受けて、徹底抗戦を図ると下院農業委員会で発言した。米国の農業補助金制度によって国際貿易が歪められたとしたブラジル政府の主張は、WTOから全面的に認められた。米国のエテリッジ下議はWTOで米国が最終的に敗退するなら、米国は米州自由貿易圏(FTAA)から撤退すべきだと表明した。

 ゼーリック代表の発言によれば、WTOの綿補助金制度で敗地にまみえた米国は、ブラジルの立場を一変させ、目にものを見せるようブッシュ大統領から命令されたという。同代表のどう喝発言は他の発展途上国への見せしめに、ブラジルをつるし上げることを示唆したと解される。
 ブラジルの勝訴にならって途上国が結束することにくさびを打ち込んだもので、ブラジル側に就く国は報復措置を受けることを同代表は暗示した。WTOドーハ・ラウンドの貿易自由化交渉に難問を投じて、交渉を難航化させる魂胆だ。
 財政力を盾に世界市場を一人占めにし、国際貿易を著しく歪める先進諸国の農業補助金制度に一石を投じたブラジルの快挙は、今後の成り行きに対して途上国から大きな期待が寄せられている。ブラジルは第一回戦では勝利を収めたが長期戦は続き、最終まで二年はかかると予想される。
 米下院で生産者代表のエテリッジ下議は、WTOが今回の判断に固執するならFTAA交渉は時間の無駄であると、ヴェネマン米農務長官に警告した。また同下議は、国際司法裁判所への提訴を提言した。ゼーリック代表は農業問題を裁判へ持ち込むのは誤りであり、飽くまで交渉で解決すのが筋であると拒否した。
 WTOは今回の判断について判例委員会を立ちあげて、綿に限らず大豆など全農産物への補助金制度と国際市場への影響、途上国の損失も調査をするとみられている。
 アモリン外相はWTOの判断が、国際ルールに違反した農業政策の見直しを先進諸国に迫る端緒になると評価した。先進諸国は自由貿易の旗印を掲げ、補助金制度を二枚舌で狡猾に活用したと外相は批判した。米国の農業補助金問題は、予想より早く決着するものと同相は楽観視している。
 WTOは遅かれ早かれ、農業補助金制度に対し最終的にルール違反の判断を下すとみられている。海外市場のみならず先進諸国の国内市場に流通する農産物についても、WTOは政治介入を行うと予想される。農業と工業を別次元としてとらえる聖域論も、通用しなくなると思われる。
 農業生産者に長期間過保護政策を採り、「モヤシ農民」を育てた先進国政府は、補助金が国家安全保障に関わる問題なので、途上国に交換取引を持ちかけてくることも予想される。ウルグアイ・ラウンドは農業が国際間の大問題として初めて、取り上げた場であった。しかし先進国間の策略で、骨抜きにされた経緯がある。