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新最賃に批判続出=ベアでなく価値修正=両院、労組、宗教界が反発=景気刺激に効果なし

5月01日(土)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙三十日】新最低賃金二百六十レアルの発表を不満としてパウロ・パイン上議(PT)は二十九日、最低賃金令見直しのため連立与党と野党を含めた超党派議員団を結成すると声明を発表した。上下両院、労働組合、宗教界などが政府決定を不承とし、再考の要求が高まっている。アレンカール副大統領も、ベアが少額に過ぎると不満の意を表した。最低賃金令は三日、下院で審議に入る。

 最低賃金は、百ドルが原則であるとパイン上議は述べた。政府は社会保険融資納付金(Cofins)増額や税収増などで五十億レアルに上る財政黒字を目論み、資金的余裕があるはずだとみている。同上議は最低賃金引き上げは、自身の政治的使命だとした。
 ヴィルジリオ上議(PSDB)を始めとする野党議員団も、目標二百八十レアルで見直しのため同上議と同一歩調を採った。ジョルジ上議(PFL)は、政府が無力で政治的敗北を完全に認めるなら、二百六十レアルを承認するという。大統領府が百時間も閣議を開いて最低賃金を決定したのは、優柔不断と糾弾した。
 副大統領は、新最低賃金をベアではなく価値修正だと皮肉った。またルーラ大統領は任期内に公約の最低賃金倍増を果たすことをまだ信じていると、副大統領は揶揄した。
 ヴァレンテ下議(PT)は、二百六十レアルは国際金融の支配に屈した結果だとした。マラニズムの八年とパロッシズムの二年で十年間、国際金融一点張りの経済政策が採られたと批判した。
 統一中央労組(CUT)のマリーニョ理事長は、最低賃金を「遺憾」とする公式声明を発表した。倍増公約の達成は現行の経済政策を見る限り、四年では不可能であり五十年後になるという。家族手当で手取り分を増やす政府の考え方は、労働人口の大部分が恩恵に浴さないので景気刺激には効果がないと非難した。
 ブラジル司教会議(CNBB)のアギネロ枢機卿は二十九日、二十レアルのベアで労働者は富まないが、富むのは国際金融の投資家だと評した。国民は空腹と極貧に耐え、満足な治療もできずにさまよっている。国民の血税で賄われる外債の金利で、国際投資家はぬくぬくと肥えているという。
 国際協定の順守は否定しないが、国民を犠牲にする経済政策は見直す必要があると枢機卿は語った。社会疎外者を生み出すような最低賃金を設定して、ブラジルは国際社会の仲間入りはできない。ブラジルは二〇%の最下層階級が、国民所得の僅か二%を享受する。南米では所得の再分配が最も拙劣な国となった。枢機卿は、この事実を黙過できないと訴えた。
 国民の三分の一は、月間所得七十九レアル以下で生活している。一般市民は内戦状態のような環境下で暴力と危険にさらされ、恐怖に脅えている。雇用創出と社会疎外の解消を最優先する経済政策を採用して、外債決済は後回しにして欲しいと述べた。借金取りは待ってもらえるが、空腹の失業者は待てないという。