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全国司教会議 大統領に苦言=失業は諸悪の根源=経済政策の見直し迫る=PT党首、反論避ける

5月4日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二日】ルーラ大統領は一日、サンベルナルド・ド・カンポ市の教会でメーデーのミサに出席し、ネルソン・ウエストラップ司教から失業対策に関し「債権者は待てるが、失業者は待てない」とする苦言を賜った。続いてデッシオ・グルッピ司祭が外債の決済を後回しにして雇用創出を優先、労働者に必要な仕事と収入を与えるよう要請した全国司教会議(CNBB)の声明書を朗読した。

 司教は、失業を諸悪の根源と位置付けた。失業は限界に達すると社会が混乱し、あらゆる悲劇につながるという。CNBBの声明書が、ミサで二時間半にわたって朗読された。人は生きるための仕事がなければ、食う物に窮する。人は限界状況に達すると、精神が錯乱すると訴えた。
 ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)の発表によれば、国民の三分の一が月収七十九レアル以下で生活している。所得格差の増大が社会秩序の崩壊をもたらし、失業者は自暴自棄となり、一般市民の平穏な生活を脅かしている。無秩序な社会構造と最悪の富の再分配が現実となっているとする厳しい内容であった。
 CNBBはさらに、経済政策の見直しを迫った。国際金融や国内の資産家を富ませる金融政策から、雇用創出と貧困撲滅へ投資を優先する金融政策に改めるべきだと指摘した。大統領は終始、夫人とともに厳しい表情で聞き入っていた。
 公約が守れないなら大統領支持者は蜂起し、都市や農村で行動を起こすと、CNBBは警告した。農地占拠運動(MST)に対処するために広大で非生産的な先住民保護区やキロンボ植民地跡地の見直しを要求した。大統領は答辞として、宗教は教会の使命を全とうすることを望むと結んだ。
 大統領はミサ終了後、労働運動に明け暮れた当時、官憲に追われた労組幹部をこの教会にかくまったことを回顧。教会の中にまで侵入しないと思ったが、官憲は催涙ガスを使って労組幹部をいぶり出し、一網打尽にした。ウエストラップ司教はその頃、サンタカタリーナ州にいたので何も知らないとお茶を濁した。
 大統領は、信じることを行うしかないと宣言した。「誰にも責任を転嫁する権利も、他の非を咎める権利もない。かつての理想を実現するために、進んで責任を取る権利だけがある。悪戦苦闘をし難関を克服し、ここまで到着したのだ。目的地はまだ遠いが、必ず目標を達成し、一億国民のために夢を実現する」と誓った。
 同席したジェノイーノPT党首は、CNBBの苦言は役目上、最もだとして反論を避けた。政治に携わる者として、苦言に耳を傾けるのも仕事だという。同党首は新最低賃金に言及して、最大の課題である失業問題を想定し、経済成長を前提とした財政政策から算出した妥当な線にそれはあると述べた。
 ジルセウ官房長官は、CNBB声明を新最低賃金への間接的批判とみて、期待以下であっても国家ができる精一杯のレベルだと抗弁した。新最低賃金でPT支持率が落ちても、雇用創出と景気回復で挽回できると同長官は楽観視している。