ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | サンパウロ市 リンチされ少年死亡=サッカー応援団抗争 逃げ遅れ、棍棒で強打=誤診か病院帰宅後悪化

サンパウロ市 リンチされ少年死亡=サッカー応援団抗争 逃げ遅れ、棍棒で強打=誤診か病院帰宅後悪化

5月6日(木)

 【アゴーラ紙、エスタード・デ・サンパウロ紙五日】二日、サンパウロ市モルンビー競技場で開催されたコリンチアンス対パウメイラスの試合前に、パウメイラスFCの応援団のメンバーらが、コリンチアーノ(コリンチアンスのファン)のマルコス・G・C・ソアーレスさん(一六)をリンチした。頭部を強く殴られた少年は同日病院側から帰宅を許されたが、三日朝に頭痛を訴え、四日未明、同市サンタ・セシーリア病院で手術中に死亡した。十二年以上前からフットボールクラブ(FC)の応援団同士の抗争によるサッカー・ファンの死亡事件が発生しているが、また一人の少年ファンが犠牲になった―。
 マルコスさんはコリンチアンスFC応援団の『ガヴィオンエス・ダ・フィエル』のメンバーではなく、同FCのシンボルのついてない白いTシャツでクラッシコの試合(伝統の一戦)を観戦しに出かけた。
 途中、友人二人とガヴィオンエスのメンバー数人と合流。地下鉄バーラ・フンダ駅に着いた時にライバルチーム、パウメイラスFCの応援団『マンシャ・ヴェルデ』のメンバーらとばったり出くわした。
 パウメイレンセ(パウメイラスFCのファン)らの方が多勢で、コリンチアーノらのほとんどが逃げ出した。一部はサンパウロ州都市圏鉄道公社(CPTM)の塀を飛び越えたが、マルコスさんは飛び越えられず、パウメイレンセらに囲まれた。
 逃げ遅れたマルコスさんは蹴られ、石を投げ付けられ、棍棒で強打された。リンチ後、軍警が大怪我をした少年をバーラ・フンダ区のアウヴァロ・D・アウメイダ市立病院に運んだ。
 少年を診察したパウロ・シゲル・イシカワ外科医は、レントゲン写真で頭蓋骨に骨折がないことを確かめ、神経検査を行った後「異常なし」と診断し、少年の帰宅を許した。少年の叔母は、「家族に連絡もせずに、未成年者の少年を一人で帰宅させるなんておかしい」と病院側を訴えるつもりだ。
 帰宅した少年は母とけんかの話をし、一日を終えて眠りについた。翌三日朝、マルコスさんはめまいと頭痛を訴え、同市東部の救急病院へ行き、そこからサンタ・セシーリア病院に運ばれた。トモグラフィー検査(X線断層撮影)で頭部に内出血を確認。四日未明、凝固した血液を除去する手術中に死亡した。
 A・D・アウメイダ病院のカスターリデ・B・C・ロッペス院長は、最初に少年の容態を診たイシカワ外科医の判断に間違いはなかったと主張。頭部を強打した場合に行われるトモグラフィー検査が実施されなかったことに対しては、「神経に異常はなく、内部出血も起こっていなかったので、あの時トモグラフィー検査をしていたとしても異常は確認されなかったはず」と返答した。また、少年を一人で帰宅させたことについては、「児童憲章に基づき、少年の自立性を尊重したまで」と弁明している。