5月6日(木)
マウリシオ・ソメソザリさん(一八)は日伯文化連盟(=アリアンサ、槙尾照夫会長)で学び始めて二年になる。
八年前にテレビで「セーラームーン」を見たことがきっかけで、アニメやマンガに関心を持つようになった。「セーラームーンはギリシャ神話について触れているのが魅力です」。
初めのうちは、挿絵だけを眺めて楽しんでいた。それだけでは物足りないと、日本語学校を探した。現在大学一年生で、専攻はホテル業務。「日本語を使えるような仕事につきたい」と夢を膨らませる。
コンハード・マカリエーロさん(一八)は、小学校と高校時代の合わせて四年間を日本で過ごした。父、アンジェロさん(四八)がフィジカル・トレーナーで東京ガス(現東京FC)、大分トリニータに籍を置いていたからだ。
日本の学校に編入、日本人児童・生徒と机を並べて学習した。「食生活に慣れるのは大変だった。でも、先生が親切だったのですぐに馴染むことができた。同級生とは今でもメールでやりとりしています」。
せっかく覚えた言葉を忘れたくないと思って、アリアンサに通う。日常生活の会話はほとんど理解出来るので、初対面の人に驚かれるそう。この十二月には日本語能力試験二級に挑むつもりだ。
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気軽にそして、楽しく勉強したい――。ライト感覚で日本語を学びたいのが今の主流だ。
栗原渡辺章子さん(日文連講師)は「日本に行って話しが出来たら、友達が増えるというぐらいの考えではないでしょうか」とみる。
びっしり文字で埋り挿絵も無い堅苦しいテキストは、敬遠されるということだ。現代っ子のニーズに合わせて、日文連は九七年に『日本語初級』を改訂、『新日本語初級』(全六巻)を刊行した。一貫性を持たせようと、中級用(全四巻)も〇三年から順次、世に送り出している。
柳紘子さん(日文連講師・司書)は「子供たちはヴィジュアルに慣れているので、写真やイラストが無かったら、がっかりするんですよ」と明かす。
最新の教科書は『にほんご じょうず(NIHONGO JOZU)』だ。留学やアルバイト、インターネットでの検索…。日本語を使う機会が増加、実践的な会話指導が求められているという。
初心者がつまづかないように配慮。ポルトガル語の対訳、新出語彙の表をつける。練習問題もゲーム感覚で出来るよう趣向を凝らした。
場面構成を主体にレッスンは進んでいく。若い日系人カップルが友人から恋人になり、最後は別れてしまうというストーリー性を持たせた。もちろん、青年たちの関心をひきつけるためだ。
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ピークには二千人以上の生徒が日文連に在籍した。日本の不況などが災いして、九四年ごろから減少、一時は四百人を割った。収入が減り、職員の給与がちょくちょく遅れた。
一連の教科書の刊行は、苦しい時代の産物でもある。栗原さんは「少しでも生徒を増やそうと、先生方がよく踏ん張った結果だと思う」と率直に敬意を表す。
生徒数は昨年から、回復基調を見せ始め、現在六百七十八人。九七年より続いた赤字経営からも抜け出した。今年七月から文協日本語講座を引き継ぐため、千百三十三人に膨らむ。つづく。 (古杉征己記者)