ホーム | 日系社会ニュース | 世界の多様性、紹介したい=元「国境なき医師団」の山本敏晴さん=万国共通教科書作り目指し=子供たちに絵を依頼=ブラジル編出版も視野に

世界の多様性、紹介したい=元「国境なき医師団」の山本敏晴さん=万国共通教科書作り目指し=子供たちに絵を依頼=ブラジル編出版も視野に

5月6日(木)

 つい最近も日本のテレビ番組『徹子の部屋』に出演するなど、国際ボランティア活動関連で有名な山本敏晴さん(三八、東京都在住)=「世界共通の教科書を作る会」代表=が三日来伯、十二日まで取材活動を精力的に行っている。世界最大規模のNGO団体、「国境なき医師団」の元理事で医師として西アフリカで医療活動。同時に、発展途上国の子どもたちを撮って全世界で写真展を開くなど、多彩な活動を繰り広げている。三日来社した山本さんに聞いた。
 「私が仮に発展途上国へ行き、必死に医者として働いても、助けられるのはせいぜい数百人。年間数百万人が、飢えや病気で死んでゆく現状の中で〃焼け石に水〃ではないのか? それに半年なり二年なりして任期が終わり、結局日本に帰ってきてしまっては、その国は元の状態に戻ってしまう」と、山本さんは述懐する。
 さらに「世の中には、たくさんの、そして様々な人たちが住んでおり、宗教・民族・性別・文化など、すべて違っています。その人が自分と違っているのは、『その人の背景にその国やその地方の素晴らしい歴史や文化が隠されているからかもしれない』と感じることができたなら、世の中の戦争を少し減らすことができるかもしれません」と、昨年から活動を本格化した同会の創立動機を語った。
 今回の来伯は、会の活動の一つである「お絵描きイベント」などの取材のため。これは世界百六十数カ国それぞれで、百人ほどの子どもたちに「一番大切なもの」というテーマで絵を描いてもらうイベントだ。 山本さんはその絵と、描いた子ども、子どもの家族、子どもの住む家の周辺の風景などを撮り、出版する計画がある。
 すでに六十八カ国を訪問、シエラレオネ、アフガニスタン、カンボジアなどについての本が出版された。ブラジル編も、「二〇〇八年の移民百周年には出版したい」と抱負を語っている。
 同会の活動は六本柱。「お絵描きイベント」以外では、(1)世界の多様性を紹介する子供のための絵本(2)欧米の歴史に偏らない世界共通の歴史の教科書(3)洗脳(文化の押し付け)にならない範囲の義務教育の模索(4)世界の宗教の比較(根底に共通する概念、人類共通の規則の模索)(5)核兵器や麻薬の怖さ、環境問題をまとめた本。
 今回の来伯では講演のほか、各NGOがどのような活動をしているかを見学。西アフリカからの奴隷の歴史、キリスト教が土着宗教と融合してどのように変容していったか、小学校でキリスト教がいかに教えられているか、環境破壊とその対策などを調査する。
 「もう二回ぐらいは来ることになりそう」。
 講演は十一日午後一時からサンパウロ市のコレジオ・イタチアイアで。参加希望者は電話(今川真紀11・3887・0820、合津奈穂子11・289・0780)まで予約を。