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教科書 時代を映して変遷(18)=USP日本語講座開設=客員教授ら文法入門を刊行

5月8日(土)

 サンパウロ大学(USP)の構内に入って、十分ほど歩くと左手に地下一階地上三階建ての建物がみえる。日本文化研究所(=Centro de Estudos Japoneses、織田順子所長)だ。
 エルネスト・ガイゼル元大統領と田中角栄元首相が取り決めた日伯共同事業のひとつとして、一九七六年四月に竣工した。
 USPが三千五百平方メートルの土地を無償提供。経団連が一億二千万円の補助金を支出したのをはじめ、国際交流基金、万博基金、日系コロニアから計八百二十万クルゼイロが集められた。
 大学院が設置されたのは九六年と、歴史はまだ浅く、修士号取得者は十三人しか輩出していない。だが、所有する日本語関係の専門書は約四万冊に上り、国内で最大規模の蔵書を誇る。          
     ◇
 日本語講座を開設する――。
 サンパウロ大学(USP)で六二年九月十八日、辞令が発令された。ブラジルの大学でもちろん初めてのことだった。授業は翌六三年からスタート。当初は二年の任期で東京外国語大学から客員教授が派遣され、教壇に立った。
 初めのうちは、即席でつくったプリントで済ませていた。六七年に客員教授と現地教師との共同作業によりテキストづくりが始まった。
 『INTRODUCAO A GRAMATICA DA LINGUA JAPONESA』(日本語文法入門)は構文論(シンタクス)を基調に、文体の構造をはっきり示すのが大きな特長だ。改訂版を重ね、今でも入門書として愛用されている。
 「大学生は既に、ポルトガル語の文法が頭に入っているので、日本語を教えるには文法から入っていったほうが分かりやすいですから」
 脇坂ジェニー日本文化研究所元所長(七八)はそう、執筆者たちの意図を推測する。
 実は六〇年代はまだ、日本語を理解出来る日系人が学生の主流を占めていたので、教科書は特に必要なかったという。七〇年代に入って、同書が力を発揮することになる。日本語をゼロから始める学生が出始めたからだ。
 「日本語がずいぶんできない子が増えていって…」。脇坂元所長自身、八〇年代に文学・文化史のクラスを持ったことがある。教えるのに、結構苦労したそうだ。
     ◇
 大学機構が七〇年に改編。「日本語・日本文化講座」は哲学・文学・人文学部(Faculdade de Filosofia,Letras e Ciencias Humanas)に組み込まれた。
 この時、「日本語・日本文学・日本文化研究及び教師の養成」と確固たる方針が定まった。
 この一年前の六九年、サンパウロ総合大学日本文化研究所はマリオ・アマラル街で開所している。
 中南米の中核になる専門研究機関として、旧OTCA(overseas technology cooperation agency)や国際交流基金が支援。客員教授の派遣や図書寄贈などを行ってきた。
 日本文化研究所は「日本学」研究の〃震源地〃になっていく。つづく。      (古杉征己記者)

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