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県人会主導で農業研修=鹿児島=青年交流に新基軸

5月12日(水)

 母県にブラジル通の若者を――。鹿児島県人会(田畑稔会長)は母県から毎年二人の若者を受け入れ、一年間に渡り農業研修させる新事業に乗り出した。今後五年間に渡り、毎年二人が来伯する。渡航費や研修期間中の給与などは受け入れ先となる鹿児島県人が経営するダイドー商事(園田昭憲社長)が全額負担する。県費留学生など各県人会が従来、取り組んできた若い世代の交流は母県に「おんぶにだっこ」が基本姿勢。県人会が経済支援をして行う研修制度は、初めてとなる。「日本の若者を呼ぶのは長年の目標だった」と田畑会長は言う。一世会員の減少で先細りが懸念される二十一世紀の各県人会運営――。新たな視点を盛り込んだ同県人会に注目が集まりそうだ。
 同県鹿屋市出身の園田社長は「母県とブラジルに貢献したい」と、自らが経営するアガリクス農場に研修生を招くことを決断。若人交流会を設け、二世ら新しい世代の活動に力を入れる鹿児島県人会を通じて、県庁と折衝を進めてきた。
 毎年二人が一年間に渡り、アチバイア市内の農場で研修する。また、深い交流を深めるにはポルトガル語の基礎は欠かせないため、月の十日はサンパウロ市内で語学研修に励む。
 十日に着聖し、パカエンブー区の同県人会館を訪問した飯尾大介さん(二八)と下原耕平さん(二一)は、ともに初めての来伯。第一期生としての緊張感をにじませながら、県人会関係者と懇談した。
 二人は今年上旬、十人の応募者から面接で選抜された。下原さんは鹿屋体育大学の学生で、将来は教師を目指すという。
 応募の動機を「異文化に接した体験を将来、子供たちに伝えたい」と語る下原さん。デカセギの日系人とも接した経験がある。「自分の生徒に日系人などの外国人がいれば、彼らの気持ちを理解できるようになりたい」と研修に期待を込める。
 一方、飯尾さんは「自らを成長させるには、海外しかないと思った」と力を込める。大学時代には農学部に籍を置いたこともあり、即戦力として期待がかかる。「ブラジルはリオのカーニヴァルしかイメージがない。私の見たブラジルを家族や友人に伝えたい」と帰国後は、日伯の相互理解に尽力する意向だ。
 数ある県人会の中でも、若い世代が参加することで知られる鹿児島県人会。「新しい血」を受け入れる今回の研修事業について、田畑会長は「日本で研修した若者と、ブラジルで研修した若者がお互いに手を結んでくれれば」と将来像を描く。