ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | NYタイムズ記者 国外退去を命令=法務省が強硬措置=「好ましからぬ人物」と判断=マスコミの多くは批判的

NYタイムズ記者 国外退去を命令=法務省が強硬措置=「好ましからぬ人物」と判断=マスコミの多くは批判的

5月13日(木)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十二日】法務省は十一日、ニューヨーク・タイムズ紙にルーラ大統領の中傷記事を寄稿したウイリアム・L・ローター記者をペルソナ・ノン・グラッタ(好ましからぬ人物)と判断し、同記者の滞在査証を無効とし、国外退去を命じた。法務省は報道が低俗的かつ虚偽と侮辱に満ちた内容で、処分は妥当であるとした。ブラジル新聞協会(ABI)のアゼード会長は、法務省の措置を専横的行為と非難した。米国各紙は、「前時代的処分」や「意外」などと報じている。

 法務省発表の公文書は、報道内容は大統領の名誉を毀損し、ブラジルの体面を著しく損なったとしている。国外退去処分は大統領命令で行われた。法相はスイスへ外遊中のため、法相代理が署名した。法相は処分の反響を懸念したが、連邦令の範囲内で措置を講じるように指示した。
 公文書には連邦令二十六条の法令六八一五号、外国人に関する条項を適用したとある。外国人の入国許可は、国益に反する行為が確認されない場合にのみ有効で外国人の権利は保障されるとなっている。連邦警察は直ちに同記者に通告し、八日以内に国外退去するよう命じる。
 大統領は十一日、公文書発表前に同記者と電話を交わした。報道の影響でブラジルに対する外国の反響はどうなっているか、同記者は質問したという。大統領は「先ず下らない記事の反響を、私に聞くな。次に記事を書いた記者を私は知らないし、記者も私を知らないでデタラメを書いた。反響を恐れるのは私ではなく、おまえだ。私のいっていることが分かるか」と答えた。
 法務省の公文書はロイター通信を通じて、外国へも報道された。国際通貨基金(IMF)は、ルーラ大統領は執務中にコーヒーしか飲まないが、私生活ではカイピリーニャも大好物であることを知っているとジョーク交じりでコメントした。
 ニューヨーク・タイムズ紙は国外退去命令の報を受けたのが、締め切り時間後だったので適切な措置が採れなかったと述べた。同紙は公文書を公表しないで欲しかったという。米国の見方では、ブラジル政府の判断はイラン政府や旧イラク政府のやり方と同じだと同紙は評した。
 セジスムンドABI前会長は、政府の措置は理解できるとした。大統領を中傷する外国人記者を放置しておくことは、ブラジル人として不愉快だと述べた。しかし、マスコミ界では政府を批判する意見が多い。
 ブロサルド元法相は、国外退去命令を軍政時代の措置と評して政府を諌めた。造反議員や国政を批判する人物を国政の敵として弾圧した時代の考え方だという。国家の威厳は認めるが、今回の措置は得るものより失うものが多いと述べた。
 最高裁の一判事は、匿名で政府の措置を明らかな報復行為だとした。同判事は、記者に対し査証回復の仮処分を裁可する考えをもらした。ブサットOAB(ブラジル弁護士協会)会長は、報道内容は好ましくないが、新聞記者の国外退去命令には、ブラジルの伝統に反すると反対意見を述べた。