5月14日(金)
「我々は百周年記念事業の中で優劣を争うつもりはありません。このプランは病院のみのものでなく、コミュニティー全体の計画であることを分って欲しい」。サンタクルース病院(旧日本病院)の横田パウロ理事長は十二日午後七時から、同病院講堂で行われた百周年記念事業説明会で、そう語った。参加した各日系福祉団体代表者らは、日頃の医療無償奉仕を称え、プロジェクトの成功と、できる限りの支援の意思を表明した。
「我々のプランには、土地やスタッフはもちろん、ちゃんとした設計図、具体的なモデルもある。夢物語ではありません」。横田理事長はきっぱりと言い切った。講堂には各県人会代表ら約百人が集まり、熱心に説明に聞入った。
同病院には四事業案があり、事業規模の総額は四千六十万ドル。「これらの新施設には、財源のない人にも入っていただくべく、我々が自助努力して資金を作るつもりです。四千万ドルの半分以上は、病院独自に調達するつもりです」と同理事長。
「日本政府からの資金に限りがあることや、記念事業に優先順位があることも承知している。我々は同じ資金源を、他の記念事業と争うつもりはありません。従来とは違う支援先、例えば都道府県、米国等を探して資金をお願いしようと思っています」。
同病院の事業計画は次の通り。(1)現在一万三千平米の延べ床面積を持つ病棟を二万平米に拡張し、病床六十床、UTI三十床、診察室三十室、駐車場を増設する。(2)ハワイの日系病院クアキニをモデルにした高齢者介護センター、(3)高齢者専用マンション(パウリスタ通りのサンタカタリ―ナ病院の同様施設がモデル)、(4)貧困者に医療・福祉を施す財源としての社会福祉基金。
理事長による説明の後、救済会役員の吉岡黎明さんはマイクを持ち、「長い期間にわたる福祉団体に対する無料医療奉仕という貢献は大きく刻まれるべきだ」と称えた。希望の家の木多喜八郎理事長も「うちも毎月入院患者などの面倒を見てもらっている。体が元気なうちに、このプランのように老後のことを考えなくては」と語った。
サンパウロ日伯援護協会の酒井清一副会長は「我々は一部で商売仇だと思われているが、もともとは同仁会という同じ源から生まれた、いわば兄弟。この計画が具体化することを祈念したい」と述べた。
その後、山形県人会の荒木克弥会長は、昨年十月の五十周年式典で県知事夫人が発作で倒れ、同病院に緊急入院し、日本語ができる看護婦と心臓病専門医が随行して日本まで送り届けた話の詳細を語り、「このプランが立派に実現することを祈念します」と結んだ。
また老人クラブ連合会の重岡康人会長も「いつも世話になっている。金銭的には何もできないかもしれないが、できる限りのボランティア協力をするつもりだ」などと語るなど、続々と支援声明があげられた。