5月15日(土)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙、フォーリャ・オンライン十四日】ルーラ大統領の中傷記事を寄稿した米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)派遣記者のウイリアム・L・ローター氏(五四、米国人)の滞在査証を法務省が無効とした件で、高等司法裁判所(STJ)のペサーニャ・マルチンス裁判官は十三日、同記者に対し、国内を自由に移動できる「通行権」を与えた。これは、ローター記者にブラジル国内での滞在を許し、これまで通りNYT紙記者としての活動を続行することを認める措置であり、NYT紙は同日、STJの判断に「満足している」との声明書を出した。
同裁判官は、セルジオ・カブラル上院議員(PMDB=ブラジル民主運動党、与党)が執筆した、同記者の人身保護の請求申請書を受け入れ、決断を下したとされる。同裁判官によれば、これは予審判決であり、STJでの第二回審理が行われるまで有効だという。
STJの決断に対する政府側の解釈は少々違う。ルイス・P・バレット代行法相は同日夜、STJの決断はあくまでも一時的なもので、法務省が決定した同記者の査証取り消し措置を取り消すものではないと発表した。
だが、十四日にスイスから帰国したマルシオ・T・バストス法相は、ルーラ大統領にローター記者の査証取り消し措置をあきらめさせる意向だという。
バストス法相はNYT紙側に謝罪、あるいは中立的な立場の記事の掲載を求める交渉を続けており、交渉に失敗した場合、大統領に査証取り消しではなく、米裁判所に賠償訴訟を起こすよう説得するとみられている。
同法相不在中に法務省が査証取り消しの声明を出したことで、バストス法相は十二日、取り消し措置を取り下げなければ大臣職を辞任すると発言しており、心配したルーラ大統領は補佐官に同法相の真意を尋ねるよう頼んだ。
法相は補佐官に対し、「辞職したいわけではないが、自分の任期中にローター氏の査証取り消し事件があったという汚点を残したくない。その時には、法相を辞めることも考えている」ときっぱり述べたという。
ジョゼ・ジルセウ官房長官は十三日、NYT紙と交渉を続けているバストス法相に対して、「事態はすでに悪化しているのだ。いまさら後戻りできない」と言明。ルーラ大統領自身、最悪の反響を不快に感じながらも、ローター記者への厳しい姿勢を崩そうとはしていない。
大統領府の補佐官の一人は、「ルーラ氏は、彼の政治家人生の中で最も間違った決断を下してしまった。(NYT紙の大統領中傷記事報道直後)彼はすべてのメディアの支持を得たにもかかわらず、(査証取り消し措置後)すべてのメディアを敵に回した。両方ともルーラ氏の政治家人生で初めての出来事だった」と不安な心境を打ち明けた。