5月20日(木)
「アンブレラ方式」
聞き慣れない言葉だが、国際協力機構(JICA)が現在、検討している支援の在り方だ。
訪日研修や日本語教育団体への支援などを同じ傘(アンブレラ)の中に収め、事業間に密接なつながりを持たせていこうというのが、趣旨。調査団が六月初めに来伯、関係機関と調整する予定だ。
個人的な見解として、小松雹玄JICAサンパウロ支所長は「簡単にいったら、効果を上げるために、見直しをやりましょうという意味です」と解説する。
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日本政府の財政改革の一環で、旧国際協力事業団は独立行政法人化。〇三年十月に、国際協力機構に組織が改編された(横文字の名称は以前と同じJICA)。
その結果、事業の(1)透明性(2)効率性(3)成果──などが要求されることになった。緊縮財政が迫られる中で、事業にメリハリをつけていかなければならないということだ。
教師謝金は今年限りで廃止。相当額が今後、研修に振り分けられる見込み。小松支所長は「既に、一部は研修に回っています」と明かす。
JICA日系日本語教師研修には基礎(1)、基礎(2)、応用、応用専門の四コースが設置されている。基礎(1)受講者の日本語能力がまちまちで、受入先が対応に苦慮することがある、とかねてから指摘されてきた。
足並みをそろえるため、ブラジル日本語センター(谷広海理事長)の教師養成講座と連係させていきたい考えだ。さらに、応用専門で自身のテーマを追究してきたベテラン教師には、帰国後、養成講座の講師に就いてもらう。
「有機的に結びつけることで、必ず良い結果がもたらされるはず」と小松支所長は太鼓判を押す。
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「あなたたち、〃当事者〃じゃないでしょう」
日本政府ばかりを頼りにする日系団体が目立つことに対して、小松支所長は厳しい口調で批判する。
「事業計画案が何ら、定まっていないのに、ただ資金援助をくれとだけ言ってくるんですよ…」
JICAが協力してくれなかったから、学校経営が破綻してしまったと筋違いな怒りをぶつけてくる人もいた。
「サンパウロに赴任してきて、約二年半が経つ。でも、日系団体の姿勢はほとんど変わっていない感じがする」と意気消沈している様子。
事業内容、予算、効果などをしっかり煮詰めた上で、相談を持ち込んでくるなら検討可能だということでもある。
「JICAだけでなく、トヨタ財団とか、ほかからも協力を得やすいはず」
ブラジルは南米では〃お兄さん〃の国。だからボリビア、パラグアイなども視野に入れた活動を展開させてほしいと、期待を寄せる。
日系コロニアに対するJICAの役割について、質問を向けたところ、小松支所長は「ありません」ときっぱりいう。もちろん、額面通りの意味ではないが、自助努力をしてほしいという願いが込められている。つづく。
(古杉征己記者)