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最賃労働者 INSS免除へ=正規雇用を促進=財務省、構造改革に着手=諸制度の簡素化目指す

5月25日(火)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十三日】財務省は二十二日、経済活性化を促進する産業構造改革案を起草した。改革案の骨子には融資制度の改正や技術競争力の強化、会社更生法と開閉業法の改正、銀行のスプレッド(金利差)取引の改革、不動産融資、最低賃金以下の所得者に社会保障負担金(INSS)免除などの制度改革が盛り込まれた。改革案の目的は、非正規労働者の正規労働契約を促進するもの。最賃労働者のINSS負担免除のための予算は、技術集約産業で補填する模様だ。

 財務省は先進国で実施している産業活性化策を取り入れ、ブラジルの諸制度改革に踏み切る決断をした。起業のための投資環境を整備し、長期展望に立った産業活性化を図る考えだ。
 財務省経済政策局のリスボア長官によれば、原案はフラガ前中銀総裁の草案とパロッシ財務相の提案という。最大の目的は、最低賃金労働者のINSS免除による非正規労働者の正規雇用促進と一般労働者並みの恩典供与とされる。
 INSS免除案は五月、議会へ上程の予定。二最低賃金以下の所得者は、現行より低率の負担率となる。同案は〇二年の大統領選で、同長官から全候補者に進言されていたが、今回ようやく実現の運びとなった。
 会社の開閉業手続きは、米国やEUの方式を取り入れ簡略化する。現行の複雑な手続きは、新規投資の促進を妨げている。同案は年末までに起草して、議会へ上程される。他にも上程済みで引き出しに眠っていた法案が、続々日の目を見ることになる見通し。
 会社更生法は経営が困難な企業への助成策を設け、倒産や破産を出来るだけ避けるというもの。不動産融資は住宅専門の金融制度を設け、簡易住宅の建築産業を促進し単純労働者の雇用倍増を図る。
 企業の競争力強化には、企業合併を促進する。これまで合併は三機関の合意を要し、結論まで時間がかかったが、それを一本化する。公正取引委員会(CADE)は、産業構造に支障する場合のみを取り扱う。中央銀行は、インフレ対策と通貨政策に専念する。銀行のスプレッド取引は、融資抑制やシステム簡素化で金融コストの削減を優先する。
 債務不履行に対する司法制度も、決済まで長時間かかった手続きを簡略化し、焦げ付きを減らす考えだ。農業融資も制度改革により、簡単に低利で貸し出せるよう簡素化する。
 低所得者のINSS免除は、社会保障院の累積赤字増加を避けるために損失補填を行いながら実施するとみられる。最賃労働者のINSS免除は民間企業で就労する二最低賃金以下の従業員が極めて少数なため、免除による影響は少ないと、社会保障院は見ている。
INSS免除による損失は、人件費が少ない鉄鋼などの技術集約産業に補填させる。一方、土木建築や製靴、繊維縫製など労働集約産業は対象外となる。コスト節約のため非正規就労として扱われた労働者にも、有給休暇や十三カ月目給料、勤務年限保障基金(FGTS)の恩典に預からせる政府の方針だ。