5月26日(水)
【ヴェージャ誌】ルーラ大統領は二十三日、これまでで最大規模といわれる大型経済使節団を引き連れて中国を訪問した。ブラジル経済のネックとなっているインフラ整備で、中国は最も期待される投資国の一つ。中国経済の発展振りは、誰の目にも一目瞭然だ。伯中両国の貿易も急増したが、中国側から見たら微々たるもの。ブラジルにとっては第三番目の輸出国だが、ブラジルからの輸入は、中国の総輸入額の一%に過ぎない。
伯中関係の橋渡しとなっているのが、サンパウロ市の中国語(マンダリン)コース。昨年の講習生は四十人であったが、今年は百三十人が受講している。リオ市でも受講希望者の列ができている。受講希望者は、中国と直接取引に挑むブラジル人企業家やビジネスマン。
中国で英語を話す人は一〇%に過ぎないので、タクシーに乗るにも苦労する。必要な会話は、旅行前に全て漢字で紙に書いてもらう。意志の伝達は、紙片を見せて了解してもらう。贈答品に白色の包装紙は、縁起が悪いので避ける。
中国は、習慣として「できない」「不可能」などの否定語はタブー。「考えてみよう」「何ができるか見て見よう」は断りの返事。取引の決着まで、商談は時間と場所をかまわず何度も繰り返す。中国人は商談の内容よりも、取引相手の人柄を観察しているのだ。信用できると確信してから、取引の本題に入る。
開放経済に入った二十五年前の七八年、中国は四億八千万人の農業生産者と小さな家内工業だけだった。その後、十七万の公社を民営化した。国内総生産(GDP)の八〇%を占めた公社の生産は、三〇%に縮小された。
八〇年から市場開放を実施し輸入品目の七五%をゼロ関税にした。中国政府は土木建築や繊維などの労働集約産業を優先し、国民一人当たりの所得が毎年、八・六%増加。沿岸地帯に多国籍企業を誘致したため、海岸線に中流階級が集中し、大消費市場が生まれた。
各種の税金はブラジルの八十種に対し、中国は十四種にまで簡略化。労働法は簡潔で、採用も解雇も簡単。中国は〇一年、世界貿易機関(WTO)へ加入、国際協定を受け入れた。
専門家は中国経済繁栄の秘密は、グローバル経済戦略と政治の安定にあるとみている。特に国民の貯蓄習慣と国内総生産(GDP)に対する投資率の高さは、ブラジルと対照的。外資に対する優遇策は周到で、ブラジル政府の外資対策は無関心に等しい。
中国が直面している問題は、都市と地方の所得格差。社会疎外者である地方の農業生産者が八億人、全人口の八八%もいる。国民所得(GNP)の九〇%は沿岸地帯に落ち、一〇%を八八%の農民階級に分配。
もう一つの問題は、金融システム。国立銀行が国営企業に融資した資金の二〇%が、不良債権になった。総額で二千三百億ドルが、焦げ付いている。
さらに心配なのは、過熱気味の中国経済だ。これにブレーキを掛けるなら、世界経済を揺さぶりかねないほどの影響がある。国際経済は、超大型のバブルを抱えているといえる。しかし、中国市場は、ブラジルにとって市場の多角化を図る絶好のチャンスでもある。