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マンションの安全神話崩壊=増える集団強盗事件=保安対策に投資しない住民

5月29日(土)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十三日】マンションは一軒家より安全?――十七日にサンパウロ市南部モルンビー区の高級マンションでアラストン(集団強盗事件)があり、アパート十九戸のうち十七戸が被害にあった。サンパウロ州保安局は、マンション強盗の統計をとっていないため、どの位増加しているかは不明だが、過去数年間に確実に増えているのは確かだ。エスタード紙は、マンションの安全管理の難しさについて掲載した。
 保安局の統計がなくても、マンション強盗の増加を裏付けるものがある。保険会社の住宅保険契約の変化である。以前は、マンションの安全性は疑われていなかったので、一軒家の保険料はアパート一戸当たりの保険料より高かった。だが、マンション強盗事件の増加によって、最近では一軒家もアパートも同額となっている。
 マンションが襲われると複数のアパートが被害に遭うため、マンションとの契約を拒否する保険会社もいるという。「昔は一〇〇%安全だとされていたが、今の比率は三〇%ぐらいだろう」と、民間警備会社労働組合のジョゼ・ジャコブソン・N組合長は語る。
 ジャコブソン組合長は、マンションの保安対策が難しい理由の一つとして、マンション建設当時、アラストンのような事態が起こると予想しておらず、保安対策を盛り込んだ設計をしていなかったことを挙げている。「一九九〇年代までそんな心配はなかったから」。
 多くのマンションの門番室が門の近くにあるのはそのため。同組合長は、門番が防御しにくく、アラームボタンを押すのも困難にさせる位置だと指摘する。「最近では銃器などの装備も完璧で、背広姿にネクタイという強盗も増えている」。
 だが、マンションが安全だと思い込み、保安対策に投資しようとしない住民が多いのも事実だ。
 ベルフォート警備会社のジョフレ・サンジン社長は、「マンションは安全ではない。保安対策を施して、初めて安全になる」と重要性を訴える。「コンドミニオ(マンション管理費)を節約するために警備トレーニングなしの安い警備員を雇っている。上流階層の住民ほど管理費を渋る。自分が一番狙われているというのに」。二十四時間態勢の警備などの費用は月に八千~一万レアルだという。
 シンジコ(住民代表)や一部の住民の間からも、「住民のほとんどは保安に対する意識が低すぎる」と指摘する声が。多くの住民は、門を開く時に周りを見ようともしない。見知らぬ人と入り、門番にとめられ気を悪くすることも。リモコンを車内に置いたまま路上駐車するのも危険だ。マンションの安全性について他人に話しすぎるのも感心できない。「ほかの住民を危険にさらしていることを自覚していない」。