6月5日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五月三十日】サンパウロ州リベイロン・プレット地区サーレス・オリベイラ市の近辺は見渡す限りトウモロコシ畑が広がる閑静な町である。しかし一旦町の中に入ると路上にトウモロコシの殻が山積みされ、家の中や軒先きで働く住民達で活況に溢れている。ここが知る人ぞ知る「パーリャの町」なのだ。
パーリャとはワラのことで、乾燥した植物の茎や穀物の殻(皮)が一般的だがこの町では、トウモロコシの実を包んでいる皮のことを指す。刻みタバコに巻くパーリャが最高の味とされ、この地帯の特産品となっている。紙巻きタバコが出現する以前はパーリャにくるんで喫っていたもので現在でも舌ざわり、匂いに魅せられた愛好者が全国的に多い。同市は当初、全国どこの田舎でもみられるように自家消費用の穀物の皮を使っていたが、トウモロコシの皮が美味なことを発見、その後、試行錯誤を繰返しパーリャの品質にこだわり続けた。これにより近隣都市から買付けにくる人達や業者が多くなるにつれて同市はパーリャ専業の様相を呈した。
このため農家はトウモロコシの実には目もくれず、皮だけを収穫、実は畑に置きざりにされ、家畜の飼料や肥料にする人達が貰い下げにやってくる。
同市の人口は九千三百二十四人だが、中小企業を含む百社以上のパーリャ製造工場があり、各社は直接、間接雇用を含め六百人以上を雇用している。これにより毎日五千袋の生産があり、市全体の収入は月二千万レアルとなっている。因みに同市の年間予算は八千五百万レアルでパーリャが市政を動かしていることになる。
一例を挙げるとジョゼ・マルチンスさん(四八)は農業未経験者だったが、今や百二十ヘクタールでトウモロコシの実ベースで一千四百袋(六十キロ袋)収穫している。これは二万五千レアルの収入となるがそれには目もくれず、実を投げ捨てて逆に通常は棄てられるはずの皮三十六トンを収穫し、何と十倍の二十五万レアルの収入を上げている。
同市のパーリャはメルコスール圏内の南米各国からも注文が殺到しているが、国内でも不足がちのためそれに応じ切れないでいる。また同市近辺の農耕地に余裕がなくなったことから、近隣や果てはミナス州の農家に種子を分け与えて栽培を委託している。収穫時に彼らは皮を引取り、実は農家に報酬として与えている。
パーリャの製法は昔ながら収穫、乾燥、葉の引き延ばしなど全て手作業で行っている。しかし需要の増加に伴い、生産性を上げるために農家が共同で機械を開発中で、すでに試作品が出来た。ゆくゆくは同市のパテントとする意向だ。